自作ゾンビ小説の草稿投稿中。
いらっしゃいませ。
自作のゾンビ物語の草稿を投稿中です。
予定では4日間の出来事として書いて
いますが3年も経つと言うのにようやく
3日目。それでもめげずにやって来れた
のは読んでくれる方がいらっしゃるから
こそと感謝しています。今後も感想なり
コメント頂けますと非常にやる気と
励みになります。宜しければ一言でも
添えて頂けますと嬉しいです。
自作ゾンビ物語。
[portrait of the dead]
めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
プロフィール
HN:
南瓜金助 (みなみうりごんすけ)
HP:
性別:
男性
自己紹介:
別HNカボチャスキのお送りします
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
憧れの人はフック船長と芹沢博士に
スネーク・プリスキンとDr.ルーミス。
彼らに多大なる恩恵を授かりました。
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
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[portrait of the dead]
何の臭いだ!?、これは…。
のり巻きを解いた途端に部屋中に充満したこの臭い…。
まさか、彼女の放つ腐敗臭か?!
腐り始めている?
これから腐って行く?
…朗報?
やつらがもし腐敗を始めていると言う事なら、
それはいつの日かこの事態に終息が訪れるのではないかと
いう期待は持てる。腐敗し分解され細胞は液状にもなり、
肉だった物は骨からそげ堕ち、骨だけとなった死体は腱も筋も
失いやがてはそこら中に骨が転がって行くはず…。
いつになるかは解らないが元の状態がおとずれる可能性もある。
しかし、僕としては悪い知らせだ。
今はまずい…この臭いのまま彼女のご両親に届けるのか?
まるで傷口に絆創膏を1週間以上貼り続けた時の様な、
肉が腐った様な、細胞が分解した様な、そんな臭い。
兎に角、臭いの原因を探ろう。
被されたヘルメットが重いせいか、彼女がうまく起き上がれ
ないのは都合が良かった。右腕を僕に向けて伸ばしては来るが
それを振り払いながらのり巻きを解かれた彼女の全裸を、
薄暗い部屋の中、懐中電灯で照らし始める。まずは失った
左腕の付け根。食べられた痕のある肩を観た。出血も無く
瘡蓋になりかけた様な状態で観た感じ特に腐敗した様子はない。
異臭もそこからではないのが解る。徐々に彼女の胸元、腹、臍、
そして股間へ目を運んだ。柔らかそうな陰毛が目に入ったが
意識している場合でもない。懐中電灯の明りは更に下方へ進み、
彼女の股の間を過ぎようとしていた。
彼女は起き上がろうとしたのか、両足を踏ん張ろうとし
少し足を開た瞬間に股の間からどす黒い様な液体が噴出した。
彼女の下に敷かれているのり巻き用にと使っていた布団に
股の間から出て来ている液体で染みが出来ているのに気が付いた。
これだ…臭いの原因はこの液体だ。
…しかも汚れているのは丁度彼女の肛門あたり?
肛門から生前の便が出て来てしまっているのか?
いや、便の臭いとは全く違う。
まさか…死人が消化出来るとは思えないので肛門から出て来ると言う
事から考えられるのは一つ…彼女の喰らってしまった人間の肉が、
彼女の体内を移動する間に腐って垂れ流されるか、あるいは噴出して
しまうのかも知れない。それにしても肉片が液状になるには期間が
短くはないか?まさか“死”の中を通る事で
液化するのが早いのだろうか。
臭いの原因が判ったのはいいが、これはまずい。
肛門から腐敗液を垂れ流したままご両親に届けて良いものか?
生前の面影はあるものの、すでに彼女は化物と言えてしまう
風貌の上、さらに腐敗臭…ご両親がもし受け取ってくれない場合は
どうすればいい?「彼女を僕に下さい。」なんてぬけぬけと申し出て
いいものだろうか。悩んだあげく、この臭いはかなりきついので、
やはり臭いの元は洗い流す事に決め、彼女をヘルメットを被せた
状態のまま風呂場へ抱えて行った。
浴槽に彼女を寝かせ水をかける。跳ね返って飛び散る水は冷たい。
お湯が出ないのは堪える。彼女が冷たいと感じる様子は無い…当然か。
股間の汚れは流せたが、洗った方が良いのか?
風呂場の洗い場の隅に、父さんが流した血を拭った時に使った
ゴム手袋と雑巾がバケツの中に入れたまま置いてあったので
ゴム手袋を両手にはめた。直に触って洗い流すのは気が引けるのも
あったせいだけれど、何かしらの感染も防げると思ったからだ。
さすがに雑巾で拭く事は出来なかったので、風呂場の手前にある脱衣所の
洗い物入れの籠から取ったフェイスタオルにボディソープをしみ込ませ
彼女の体を洗い、肛門と股間も洗った。
…とは言え、おととい初めて女性の体を洗い流した僕が女性の性器部分を
丁寧に洗った事などある筈も無く、タオルで数回拭った程度だけれど。
風呂場に石鹸の香りが満ち、腐敗臭も消えた頃、彼女の体から泡を
洗い流す。ヘルメットを被せたままが良かったのかスムーズに行えた。
念のため、彼女の下腹部を押して、肛門から腐敗液が流れ出ないか
試してみる。
ビュ〜…
出てしまった。始めに試すべきだった…。
数回下腹部を押すと液は出なくなった。
…これで大丈夫か?彼女の股間をもう一度洗いなおした。
彼女を抱え浴槽から出すとそのままリビングへ。
ソファーに寝かせ、脱衣所で手に取ったバスタオルで彼女の体の水滴を
拭き取り始める。もう腐敗液が出ないといいのだけれど…。
彼女がこの有様なら外も同様の事が起こっている筈…
街は腐敗臭で溢れかえっている事だろう。
死が視覚の次に嗅覚からも攻め寄る。
死の世界がまた一歩完成に近づいているように感じ身震いした。
外の様子が気になって来たのでテレビを点けると男性アナウンサーが
ニュースを読み上げていた。昨夜、僕が父さん母さんと格闘していた頃
だと思うけれど、どこからか洩れたガスが充満し、避難所になっていた
ある集会所に避難していた人々が中毒死したらしく、逃げ延びた人の
話から、そこはもうやつらの巣窟へと変わってしまったらしい。
それでか?ガスが止まってしまったのは…。
やつらが生前の行動を繰り返すのであれば、食事を作る習慣があった
主婦などはコンロに火を点し料理をする動作をするかもしれない。
ガスにしっかりと着火しなければ洩れ放題で充満なんて事も
ありうるのだろうか…。
彼女を体を拭きながら、横目でテレビを見続けると見た事のない映像が
目に入った。どこかの繁華街…デパートやオフィスビルが乱立する
都心部の様子らしかった。携帯電話のカメラ機能で動画を撮った様で
画像は荒かったが、位置的には建物の3、4階辺りから目の前の
2車線の道路の様子を撮った俯瞰映像らしい。道路を我が物顔で
横行しているやつらの群れに向かってどこからか放たれた数発の
銃声が響いていた。どこだろうか、この映像の場所は。
やつらは着弾の勢いで血飛沫をまき散らしながら次々と道路に
倒れ込むが、何をやってもやつらを行進止める事が出来ないのは
判っている。
…こんな所に、僕は出掛けようとしている。
その映像に合わせて男性アナウンサーのコメントが挿入される。
「これは昨日、動画サイトに投稿された映像です。この事から判るように
まだ生存者は大勢いる事でしょう。この異常事態の中、身を隠し、
人々は懸命に生き延びようとしています。トラックに乗り合わせた
人物達はこの繁華街から脱出を試みた様です。食料も尽きれば調達し
なければならないでしょう。…災害時の為に政府が蓄えている筈の
食料は今どうなっているのでしょうか。この事件発生当初から
コンビニや食料品店には暴徒と化した人々が押し寄せ、
必要な物を奪い去っている姿がいたる所で見られました。
政府からの通達も滞り、公安の維持もままならない現状に加え
こうも物資が行き渡らない背景には、一向に終わりの見えない
この現象に、暴徒や略奪者の襲撃を押さえ込めず、あらゆる倉庫などが
荒らされてしまって、我々には届けられない可能性も考えておいた方が
良いのかも知れません。」
テレビから流れる映像は銃声の主を捉えていた。
ゆっくりと走る2トントラックの荷台に乗っている背広を着た7、8人の
集団が見て取れた。銃を携帯しているのであれば刑事か警察関係者か?
あるいはそれに敵対する組織の面々かは判断出来ないが、次第に銃の弾も
無くなったのか一瞬静まり返ると、撃たれて倒れ込んだやつらの体の上に
トラックが乗り上げてしまい、思うように走らせる事が出来ず立ち往生。
案の定、トラックはやつらに囲まれ、やつらは荷台へ登り始めると
逃げ遅れた背広の人物達は次々にやつらに喰われ始め、荷台は赤い血の色
しか見て取れなくなった。やはり、ここも、どこも、同じ…。
しかしその直後、この映像が投稿された意図が明らかになる。
赤く染まった荷台のトラックの周辺からなにやら高さ3メートル
くらい、幅もそのくらいはありそうな巨大な塊がふたつ近づいて
来ていた。距離があってなかなか識別出来なかったが、目を凝らして
みるとどうやらいたる所から人間の腕や足が無造作に数本生えている
風にも観え目を疑った。その塊は、複数のやつらがひとつになった
物の様だった!!
なんなんだ、これは!!
見た感じイソギンチャクかドリアンかと言った形だ…
それを見て思い出したのは、昨日だったかテレビで流れていた
分断されたやつらのバラバラのパーツが人々にくっ付き
襲いかかっている映像。そんな部位達が際限なく人に襲いかかり、
この肉片だらけの塊となった動く死体を構築しているのだとしたら!?
…まさにやつらの集大成、死のオブジェと言える産物。
住宅地の様な人がまばらな場所では見かけないかも知れないが、
人が大勢集まった繁華街ではあんな塊までうろつき始めたなんて…。
一体どうなっているんだ、この世界は!!
…こんな所に、僕は出掛けようとしている!
アナウンサーが付け加えた。
「映像では残念ながら脱出に失敗してしまった様です。
しかしながら私たちは、このような状況下でも決して諦める事無く、
生き延びて行かねばなりません。番組をご覧の皆様、情報提供を
お願い致します。正しい情報だけが頼りです。ご協力お願い致します。
FAX番号は…」
テレビに目を奪われていてソファーに寝かせていた彼女が起き上がった
のに気が付かなかった。ヘルメットが僕の顔の右頬にゴツンと当たる。
「痛っ!!!」
ヘルメットがあるからと油断し過ぎだ。
ヘルメットからはみ出た彼女の濡れた髪が背中にくっ付いているのに
気が付くとテレビを消し、髪を乾かしにドライヤーのある脱衣所に
抱えて行った。髪を乾かし終えると、また彼女を抱え2階の
僕の部屋に戻り彼女をベッドの上にそっと寝かせた。
腐乱液の臭いがまだ充満している。彼女を家に連れて来た時に
彼女が着ていたボロボロの血まみれの学生服を詰めたごみ袋が
部屋の角にあったので、汚れた布団も臭いがもらないように丸めて
そこに一緒に突っ込んで口を縛った。
彼女に母さんに借りた服を着せ、いよいよ外出の時が来た様だ。
思いがけない事が起きて出掛けるまでに時間がかかってしまったが…。
臭いを消すため部屋のカーテンは閉めたまま窓をほんの少し開け、
ついでにその僅かな隙間から外の様子を伺った。
部屋の中よりは腐敗臭は気にならないが
やはり外もどこからともなく僅かに匂って来る感じがする。
臭いの元はやつらに他ならないのは確実なのだけれど。
今、気が付いたが臭いでも感染するとしたら確実に僕もアウトだぞ。
あるのかな?そんな事。「臭い」は臭いを発生する微粒子が
漂っている証だと聞いた事がある。そんな微粒子を僕たちは吸っている。
昨日、嗅いでしまった隣りの腐乱した夫妻のカビ臭いような
“死”の臭いも嗅いでいた。…だったら大丈夫?
様子を見守るしか無いか。
普段なら遅刻と言う時間帯ではあったが
外にはまだ学生服やスーツ姿のやつらが、登校中で出勤中。
大丈夫か?…こんな所に、僕は出掛けようとしている!!!
(続く)
→第27章へ。
[portrait of the dead]
何の臭いだ!?、これは…。
のり巻きを解いた途端に部屋中に充満したこの臭い…。
まさか、彼女の放つ腐敗臭か?!
腐り始めている?
これから腐って行く?
…朗報?
やつらがもし腐敗を始めていると言う事なら、
それはいつの日かこの事態に終息が訪れるのではないかと
いう期待は持てる。腐敗し分解され細胞は液状にもなり、
肉だった物は骨からそげ堕ち、骨だけとなった死体は腱も筋も
失いやがてはそこら中に骨が転がって行くはず…。
いつになるかは解らないが元の状態がおとずれる可能性もある。
しかし、僕としては悪い知らせだ。
今はまずい…この臭いのまま彼女のご両親に届けるのか?
まるで傷口に絆創膏を1週間以上貼り続けた時の様な、
肉が腐った様な、細胞が分解した様な、そんな臭い。
兎に角、臭いの原因を探ろう。
被されたヘルメットが重いせいか、彼女がうまく起き上がれ
ないのは都合が良かった。右腕を僕に向けて伸ばしては来るが
それを振り払いながらのり巻きを解かれた彼女の全裸を、
薄暗い部屋の中、懐中電灯で照らし始める。まずは失った
左腕の付け根。食べられた痕のある肩を観た。出血も無く
瘡蓋になりかけた様な状態で観た感じ特に腐敗した様子はない。
異臭もそこからではないのが解る。徐々に彼女の胸元、腹、臍、
そして股間へ目を運んだ。柔らかそうな陰毛が目に入ったが
意識している場合でもない。懐中電灯の明りは更に下方へ進み、
彼女の股の間を過ぎようとしていた。
彼女は起き上がろうとしたのか、両足を踏ん張ろうとし
少し足を開た瞬間に股の間からどす黒い様な液体が噴出した。
彼女の下に敷かれているのり巻き用にと使っていた布団に
股の間から出て来ている液体で染みが出来ているのに気が付いた。
これだ…臭いの原因はこの液体だ。
…しかも汚れているのは丁度彼女の肛門あたり?
肛門から生前の便が出て来てしまっているのか?
いや、便の臭いとは全く違う。
まさか…死人が消化出来るとは思えないので肛門から出て来ると言う
事から考えられるのは一つ…彼女の喰らってしまった人間の肉が、
彼女の体内を移動する間に腐って垂れ流されるか、あるいは噴出して
しまうのかも知れない。それにしても肉片が液状になるには期間が
短くはないか?まさか“死”の中を通る事で
液化するのが早いのだろうか。
臭いの原因が判ったのはいいが、これはまずい。
肛門から腐敗液を垂れ流したままご両親に届けて良いものか?
生前の面影はあるものの、すでに彼女は化物と言えてしまう
風貌の上、さらに腐敗臭…ご両親がもし受け取ってくれない場合は
どうすればいい?「彼女を僕に下さい。」なんてぬけぬけと申し出て
いいものだろうか。悩んだあげく、この臭いはかなりきついので、
やはり臭いの元は洗い流す事に決め、彼女をヘルメットを被せた
状態のまま風呂場へ抱えて行った。
浴槽に彼女を寝かせ水をかける。跳ね返って飛び散る水は冷たい。
お湯が出ないのは堪える。彼女が冷たいと感じる様子は無い…当然か。
股間の汚れは流せたが、洗った方が良いのか?
風呂場の洗い場の隅に、父さんが流した血を拭った時に使った
ゴム手袋と雑巾がバケツの中に入れたまま置いてあったので
ゴム手袋を両手にはめた。直に触って洗い流すのは気が引けるのも
あったせいだけれど、何かしらの感染も防げると思ったからだ。
さすがに雑巾で拭く事は出来なかったので、風呂場の手前にある脱衣所の
洗い物入れの籠から取ったフェイスタオルにボディソープをしみ込ませ
彼女の体を洗い、肛門と股間も洗った。
…とは言え、おととい初めて女性の体を洗い流した僕が女性の性器部分を
丁寧に洗った事などある筈も無く、タオルで数回拭った程度だけれど。
風呂場に石鹸の香りが満ち、腐敗臭も消えた頃、彼女の体から泡を
洗い流す。ヘルメットを被せたままが良かったのかスムーズに行えた。
念のため、彼女の下腹部を押して、肛門から腐敗液が流れ出ないか
試してみる。
ビュ〜…
出てしまった。始めに試すべきだった…。
数回下腹部を押すと液は出なくなった。
…これで大丈夫か?彼女の股間をもう一度洗いなおした。
彼女を抱え浴槽から出すとそのままリビングへ。
ソファーに寝かせ、脱衣所で手に取ったバスタオルで彼女の体の水滴を
拭き取り始める。もう腐敗液が出ないといいのだけれど…。
彼女がこの有様なら外も同様の事が起こっている筈…
街は腐敗臭で溢れかえっている事だろう。
死が視覚の次に嗅覚からも攻め寄る。
死の世界がまた一歩完成に近づいているように感じ身震いした。
外の様子が気になって来たのでテレビを点けると男性アナウンサーが
ニュースを読み上げていた。昨夜、僕が父さん母さんと格闘していた頃
だと思うけれど、どこからか洩れたガスが充満し、避難所になっていた
ある集会所に避難していた人々が中毒死したらしく、逃げ延びた人の
話から、そこはもうやつらの巣窟へと変わってしまったらしい。
それでか?ガスが止まってしまったのは…。
やつらが生前の行動を繰り返すのであれば、食事を作る習慣があった
主婦などはコンロに火を点し料理をする動作をするかもしれない。
ガスにしっかりと着火しなければ洩れ放題で充満なんて事も
ありうるのだろうか…。
彼女を体を拭きながら、横目でテレビを見続けると見た事のない映像が
目に入った。どこかの繁華街…デパートやオフィスビルが乱立する
都心部の様子らしかった。携帯電話のカメラ機能で動画を撮った様で
画像は荒かったが、位置的には建物の3、4階辺りから目の前の
2車線の道路の様子を撮った俯瞰映像らしい。道路を我が物顔で
横行しているやつらの群れに向かってどこからか放たれた数発の
銃声が響いていた。どこだろうか、この映像の場所は。
やつらは着弾の勢いで血飛沫をまき散らしながら次々と道路に
倒れ込むが、何をやってもやつらを行進止める事が出来ないのは
判っている。
…こんな所に、僕は出掛けようとしている。
その映像に合わせて男性アナウンサーのコメントが挿入される。
「これは昨日、動画サイトに投稿された映像です。この事から判るように
まだ生存者は大勢いる事でしょう。この異常事態の中、身を隠し、
人々は懸命に生き延びようとしています。トラックに乗り合わせた
人物達はこの繁華街から脱出を試みた様です。食料も尽きれば調達し
なければならないでしょう。…災害時の為に政府が蓄えている筈の
食料は今どうなっているのでしょうか。この事件発生当初から
コンビニや食料品店には暴徒と化した人々が押し寄せ、
必要な物を奪い去っている姿がいたる所で見られました。
政府からの通達も滞り、公安の維持もままならない現状に加え
こうも物資が行き渡らない背景には、一向に終わりの見えない
この現象に、暴徒や略奪者の襲撃を押さえ込めず、あらゆる倉庫などが
荒らされてしまって、我々には届けられない可能性も考えておいた方が
良いのかも知れません。」
テレビから流れる映像は銃声の主を捉えていた。
ゆっくりと走る2トントラックの荷台に乗っている背広を着た7、8人の
集団が見て取れた。銃を携帯しているのであれば刑事か警察関係者か?
あるいはそれに敵対する組織の面々かは判断出来ないが、次第に銃の弾も
無くなったのか一瞬静まり返ると、撃たれて倒れ込んだやつらの体の上に
トラックが乗り上げてしまい、思うように走らせる事が出来ず立ち往生。
案の定、トラックはやつらに囲まれ、やつらは荷台へ登り始めると
逃げ遅れた背広の人物達は次々にやつらに喰われ始め、荷台は赤い血の色
しか見て取れなくなった。やはり、ここも、どこも、同じ…。
しかしその直後、この映像が投稿された意図が明らかになる。
赤く染まった荷台のトラックの周辺からなにやら高さ3メートル
くらい、幅もそのくらいはありそうな巨大な塊がふたつ近づいて
来ていた。距離があってなかなか識別出来なかったが、目を凝らして
みるとどうやらいたる所から人間の腕や足が無造作に数本生えている
風にも観え目を疑った。その塊は、複数のやつらがひとつになった
物の様だった!!
なんなんだ、これは!!
見た感じイソギンチャクかドリアンかと言った形だ…
それを見て思い出したのは、昨日だったかテレビで流れていた
分断されたやつらのバラバラのパーツが人々にくっ付き
襲いかかっている映像。そんな部位達が際限なく人に襲いかかり、
この肉片だらけの塊となった動く死体を構築しているのだとしたら!?
…まさにやつらの集大成、死のオブジェと言える産物。
住宅地の様な人がまばらな場所では見かけないかも知れないが、
人が大勢集まった繁華街ではあんな塊までうろつき始めたなんて…。
一体どうなっているんだ、この世界は!!
…こんな所に、僕は出掛けようとしている!
アナウンサーが付け加えた。
「映像では残念ながら脱出に失敗してしまった様です。
しかしながら私たちは、このような状況下でも決して諦める事無く、
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テレビに目を奪われていてソファーに寝かせていた彼女が起き上がった
のに気が付かなかった。ヘルメットが僕の顔の右頬にゴツンと当たる。
「痛っ!!!」
ヘルメットがあるからと油断し過ぎだ。
ヘルメットからはみ出た彼女の濡れた髪が背中にくっ付いているのに
気が付くとテレビを消し、髪を乾かしにドライヤーのある脱衣所に
抱えて行った。髪を乾かし終えると、また彼女を抱え2階の
僕の部屋に戻り彼女をベッドの上にそっと寝かせた。
腐乱液の臭いがまだ充満している。彼女を家に連れて来た時に
彼女が着ていたボロボロの血まみれの学生服を詰めたごみ袋が
部屋の角にあったので、汚れた布団も臭いがもらないように丸めて
そこに一緒に突っ込んで口を縛った。
彼女に母さんに借りた服を着せ、いよいよ外出の時が来た様だ。
思いがけない事が起きて出掛けるまでに時間がかかってしまったが…。
臭いを消すため部屋のカーテンは閉めたまま窓をほんの少し開け、
ついでにその僅かな隙間から外の様子を伺った。
部屋の中よりは腐敗臭は気にならないが
やはり外もどこからともなく僅かに匂って来る感じがする。
臭いの元はやつらに他ならないのは確実なのだけれど。
今、気が付いたが臭いでも感染するとしたら確実に僕もアウトだぞ。
あるのかな?そんな事。「臭い」は臭いを発生する微粒子が
漂っている証だと聞いた事がある。そんな微粒子を僕たちは吸っている。
昨日、嗅いでしまった隣りの腐乱した夫妻のカビ臭いような
“死”の臭いも嗅いでいた。…だったら大丈夫?
様子を見守るしか無いか。
普段なら遅刻と言う時間帯ではあったが
外にはまだ学生服やスーツ姿のやつらが、登校中で出勤中。
大丈夫か?…こんな所に、僕は出掛けようとしている!!!
(続く)
→第27章へ。
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