自作のゾンビ物語の草稿を投稿中です。
予定では4日間の出来事として書いて
いますが3年も経つと言うのにようやく
3日目。それでもめげずにやって来れた
のは読んでくれる方がいらっしゃるから
こそと感謝しています。今後も感想なり
コメント頂けますと非常にやる気と
励みになります。宜しければ一言でも
添えて頂けますと嬉しいです。
めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
憧れの人はフック船長と芹沢博士に
スネーク・プリスキンとDr.ルーミス。
彼らに多大なる恩恵を授かりました。
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[portrait of the dead]
「君は理子に優しすぎる。」
「えっ?!」
突然理子のお兄さんの口にした言葉に動揺してしまう。
それはそうだ…僕の今までの行動からすれば、なんらかの気持ちがあると察しがつくのは明らかだ。どうしよう…どう説明すれば…
「理子がこんなになってまで、よくしてくれるなんて…もしかして…付き合ったりしていたんじゃないのか?」
「つ…付き合っていたなんて…あり得ません!! 選択教科が一緒のクラスで…クラスメイトが無残な姿で徘徊しているのが見ていられなかっただけです…」
「本当にただのクラスメイトなのか?君の真剣な行動を見ていると友達に対する感情の域は超えているんじゃないかって思うんだ…本当に付き合っていたとかではないんだね?…いや、交際を否定するつもりは無いんだ。高校生ともなれば恋愛くらいはするだろう。理子の枕元の君の写りこんでいる写真と、君の理子に対するこれまでの行動…私にはその二つが結びついて考えてしまって…」
「そ…そんな事、本当にありません。僕も今この時点までそんな写真があるとも知りませんでしたし…こうして送って来たのだって理子さんが帰りたかった筈だと思って…」
「君はどうなんだ?理子にここまでしてくれた、君の気持ちに恋愛的な感情はなかったのか?」
どうしたらいいのか…ここは本心を告げて好きだと告白した方がよいのだろうか?それとも友達を装った方が良いのか?…下手したらストーカーまがいだと考えられても困る…彼女が僕に興味があったのか解る術の無い今は永遠に僕の片思いのまま…
「いや、すまない…君の気持ちを聞いている場合じゃない。よく聞いてくれ…これから言う事は本気だ。」
お兄さんは僕を真剣なまなざしで見つめこう言った。
「君に、理子を預けられないかな?笑顔を取り戻せる方法に気が付いた君になら託せるとそう思ったんだ…」
「え…?」
なんだこの展開は!? 僕にとってこんなに好ましい事態が来てもいいのか?
「せっかく家に届けてくれたのにこんなことを言うのはなんだが…君の元で過ごした方が理子にはいいのかもしれないと…いま急に思いついたんだ…正直、この状態の理子の世話は私にはどうすれば良いか考えも及ばない。私には荷が重い…その上、父や預かっている子供たちの状態を考えれば、家に置くのは危険だと言われ続けるだろう…厄介払いと言われても仕方ないのだけれど…君は、この変異状態にある程度対応出来る様だし…どうだい?考えてはくれないか?」
考えてもみなかった問いに驚く。
…僕が彼女を託されるなんて思いもよらなかった。
僕は構わないけれど…はっきりとそう答えたかったけれど、なぜか声に出来ない。
「理子がもし君に気持ちがあったとするなら…君が理子の事を思ってくれるのなら…どうかな?君に理子を託せないか?理子を引き取りたいと思ってはいるものの、私には危険を回避する為に車のトランクに閉じ込めておくしか方法が思い浮かばないんだ…理子の事…頼めないか?」
「わ…解りました。僕がお預かりします…」
僕を誘導する為だったのか…トランクの中に閉じ込めっぱなしは可哀相だと思ったら…そう答えていた。それでもお兄さんの真剣な表情、行動からも気持ちは伝わって来ていた。
僕の決意は決まった。
彼女を再び背負い、連れて帰る。
「それなら、ひとつお願いがあるんですけど…理子さんの、この部屋の写真を撮っていってもいいですか?理子さんに見せてみたいんです。生きていた頃の記憶が少しでも思い起こされるかもしれないので…それを確認したいんです。」
「ああ…構わないよ。たくさん撮っていってあげてくれ…理子に見せてあげてほしい。…有り難う。私が腑甲斐無いばかりに…君にまた迷惑を…」
ポケットにしまい込んでいた携帯電話のカメラでハートマークが散りばめられた可愛らしい雰囲気の部屋を隅々まで写真に収めた。…いつか彼女の記憶を蘇らせる為にこの部屋をそっくりそのままの内装を再現出来たらいいのになと、思ったからだ。
そうなれば善は急げ…“騒がしい夜”がやって来る前に自宅に帰りたい。
事情を話すと、お兄さんは“騒がしい夜”を避け、その騒ぎが落ち着いた頃に帰れば良いと提案してくれた。それでも暗い夜に“死のオブジェに”出くわすのも避けたいと話すと、普段利用している原チャリを借してくれる事になった。
有り難い。正直、歩いて帰るのは来た時よりも辛そうだなと気合いをいれていた。
ガレージに戻り、彼女を閉じ込めていた車のトランクから出した。来るときとは別の服装にはなったけれど相変わらずの動き。彼女はまた猿ぐつわにヘルメットを被せられ、僕はそんな彼女を背負う。お兄さんがどこからか持って来てくれた黄色いロープで彼女が落ちないように括り着けてもらうと、原チャリに股がってゆっくりとガレージを出た。家の中でエンジンをかけるのはやつらに気付かれる恐れがあるので外に出てからかけるのが良いと判断。入って来た門までお兄さんに支えられながら僕は足を使って移動する。その様子を彼女の両親が家の中から窓越しに見ている。彼女のお父さんの言い分もわからなくはないので、ご両親は想像もできないくらい悲しいんだろうなと、そう受け止めていた…
門の前まで辿り着くとお兄さんが僕に声をかける。
「理子を頼んだ…気を付けて…」
「はい…大事な妹さん、お預かり致します。」
「…死ぬなよ。」
「はい。」
お兄さんは鉄製の重たそうな門を僅かに開けて外を確認すると、安全なようなので僕を誘導し原チャリを足を使って転がし僕等は門を出た。お兄さんと言葉無く目配せし、お互い頷くと門がゆっくりと閉まっていった。
もう後戻りは出来ない。
目の前には上って来た坂道。
やつらの姿は見当たらない。
僕はブレーキを使って坂を移動。門から離れた場所でエンジンをスタートさせる事にした。もしエンジンがかからなければバイクを捨てて彼女を背負ったまま歩いて帰るだけだ。
エンジンは無事にかかった。
ガソリンは満タンに近い。
よかった…あとは家路にまっしぐら。
僕は高揚していた。
彼女との別れを決意し、家族の元へと送り届けた結果、どう言うわけか彼女を託された。父親ではないが家族であるお兄さんからは認められ、秘かに暮らさないですむ後ろめたさも振り払われた。もう誰にも邪魔はされずに彼女と二人で暮らして行ける…
僕等の新生活が始まる。
エンジンがかかるとそれなりの音が辺りに響き渡り、僕は2度ほどスロットルをまわしふかしてみる。音に誘われたか、やつらが坂道の下方に10体程湧いて出ていた。
薄暗くなる。
夕暮れも近い。
やつらを上手くかわし、急いで帰らなければならない。
湿った風が頬を撫でた。今夜はきっと雨になる。
彼女を家に送る途中、雲行きが怪しかった空模様は増々どんよりとし始めていた。
僕の気持ちはこの上ないくらいの晴れやか。
スロットルを徐々に回す。
前進。
やつらのうろつき始めた坂道を下り始める。
突破する為に。
意外な事に原チャリに向かって来るやつらは全部が全部ではなかった。
線路の中と同じく近付いては危険だと判断する生前の記憶が作用したのかも知れない。半分以上は避けようとしていた。これは予想外だったけれど、新情報は有り難い。
彼女の家からの最寄り駅が見え、来た時に通った線路の脇に沿って伸びる道路を通って帰路についた。原チャリのおかげか、やつらが集まるまでに通り過ぎる事が出来、事の他問題なく帰路を消化して行った。
次第に辺りが暗くなる。
怪しい空模様のせいか、思ったより日の暮れるのが早い気がした。
暗くなってはやつらをかわしながらの進行にも手こずりそうだ。
まずい…自宅に着く頃に“騒がしい夜”とはち合わせてしまうのは避けたい。
巨大な“死のオブジェ”と出くわした小学校にもうすぐ近付く。あの辺は特に警戒しながら進んだ方が良さそうだと判断。頭上では黒雲が空を被う。暗さで前方が見づらくなりライトを点けると、顔にポツポツと雨の雫が当たり始めた。家に着くまではあと半分ほどの距離。彼女も変わりなく原チャリの加速が負担になっていない様子。雨の前には帰れそうにないと判断するも雨宿りする場所も探し様が無さそうだし、進むしか道はないと考えひたすら進んだ。
雨脚も強くなり、原チャリのコントロールも危ぶまれて来たので、やむを得ず進む速度を落とす。前方道路の中心部にやつら3体が点在しているのを確認する。かわそうと注意深く観察していると僕等に気も止めず道路の脇に向かい、道沿いに立てられた民家のガレージやバス停の雨よけに入って佇んみ始めた。
???
なんてことだ…やつらは雨を嫌う?
これは生前に雨をよけて過ごした記憶の現れか?
中には気にも止めず歩いているものもいるが、これはもしかすると特ダネだ!!
雨の思いもよらなかった効果。僕にとっても好都合。
やつらが雨宿りしているうちに家路を急げる!!
“死のオブジェ”の現れた学校の付近を通る。この辺りのやつらもほとんどが民家の軒や車庫等に身を潜め雨宿りしていた。凄いじゃないか…雨。生きている者がいるなら気付いていてほしい現象。これなら生存者の生き残る為の戦略が立てられそうな気もして来る。雨音にまぎれ、そこら中からドンドンドンとおそらく玄関を叩いているであろう音が聞こえ始めた。雨脚のせいで帰宅を中断した者がいるせいか、騒がしいとまでは聞こえないが、時間経過からすると“騒がしい夜”の始まりに違いなかった。
雨脚も手伝って“騒がしい夜”をやり過ごすと辺りは本格的に暗くなっていた。
雨でも夜は訪れる。雨脚も弱まり小雨程度に変わると見通しも良くなった。
ふと道路の脇の公園の敷地内に立てられた公衆便所に行列が出来ているのに気が付く。
やつらが並んでいる?…何故?
屋根の無い所まではみ出して並ぶとなると雨宿りの為でも無さそうだ…
そう言えば“騒がしい夜”の後、やつらは入れなかった玄関から去ってどこかに向かって行くけれど、まさかここに集まっているのか?どうして?
…大抵の一般人は昼間行動し、夜は寝ている。夜の行動の記憶からの条件反射はなにかと考えると、夜はふとトイレに起きる事があると考えれば、彼らの“夜”からの条件反射はトイレに行く事なのか?家に入れないから、わざわざトイレのある場所にやってくるのか?排尿や排便行為がやつらにもあるのか?彼女と暮らした限りではその兆候は見受けられないけれど、生前の記憶がもたらす反応を考えると、可能性が無いわけでもなさそうだ…謎は深まるばかり。…いや、今は余計な考えをせず、帰る事に集中だ…
そうこうしているうちに僕の視界に入ってきたのは窓ガラスの割られたコンビ二だ。看板や屋内は煌煌と光る明りが付いていて、まるで光に誘われる虫達のように集うやつらの姿が目に入った。20体くらいはいるだろうか…暗闇を恐れる人としての心理の現れだろうか…やつらは夜こうして過ごす事もあるのかもしれない。…まてまて気を反らすな。帰る事に集中だって…
考え事で気が緩んだ所に、濡れた道路のマンホールでタイヤを滑らる。
「うわ!! やばいやばいやばい!!」
僕はステップに置いていた両足を伸ばし地面を捉え支える。
バランスを崩し原チャリは前方斜め前にいた、おそらく原チャリを避けようと身をかわしていたであろうやつらの一体を撥ねてしまった。僕等は辛うじて転倒は免れ、慌てて原チャリを両足で支えて止まった。
僕は3メートル程前方に跳ね飛ばしたやつを確認した。
倒れ込んだやつを確認すると目が合ってしまう。
女だ…肩を擦りむいて傷があらわになった姿でも痛みを訴えず動きだす。
明らかに撥ねた前以上の力強さで起き上がり、僕等に向かって来るのがわかった。
「やばい!!」
逃げなきゃ!! 僕はとっさに原チャリのスロットルを回し、やつの脇を通り抜けようと走らせた。さっきまで怖がって避けようとした筈の原チャリに挑むような姿勢でやつが進んで来る!! やつの伸ばした手は僕等を捉える事が出来なかったが、バックミラーでみた遠ざかるその姿は何も恐れなくなった猛々しさを纏っていたような気がした…
攻撃に対してそれ以上の攻撃力を発揮する姿を先日テレビで見ていた事を思い出す。
これか!! これはまずい!!…やつらは生前怖かった事柄を克服してしまう!!
ヘタに攻撃してはいけないんだ!!
一心不乱に原チャリを走らせ、気付けば家の近くのサイクリング道路を通過。本来なら原チャリは通っては行けない場所。ここでも雨のおかげか歩いていているモノはいなかった。このまま原チャリで家まで乗り付けようか、この辺りで原チャリを降り歩こうか、迷う。誰が見ているかわからないので音の激しい原チャリはここで乗り捨て、家の裏手まで伸びるサイクリング道路を彼女を背負って歩く事にした。家までの距離大体500メートルくらいか?ありがとう、お兄さん、雨、夜。ここまでなんとか辿り着けました。
原チャリをサイクリング道路の脇に停め、家まで歩き始めた。やつらの誰一人に見られてもいけないので彼女を家に送った時と同じ方法…サイクリング道路から河川側に立てられた柵を下り川縁を歩く。2m弱のコンクリートの壁を左手にしながら、家の側まで辿り着いた。柵を上ろうと上を見上げるとやつらが一体歩いているのが目に入り手を伸ばすのをやめた。ジャージ姿でいかにも運動選手の容姿から判断すると、雨だろうが夜だろうが練習に練習を重ねた体にはなんの抵抗も無いのだろう。こういうやつも今後は手強い相手になる。こいつも恐怖を克服したやつと同類だ…
ジャージ姿のやつをやり過ごすと、彼女を背負いながらの柵越えに苦戦しつつ登り、サイクリング道路を渡ると僕の家の裏手だ。家の脇を通り玄関に向かって進む。雨のせいかカビ臭い臭いが強くなった気がする。隣りの五十嵐さんもこんな臭いで僕の前に現れた…まさか近くにいるのか?隣りの五十嵐さんが埋められていたであろう穴ぼこが生け垣の隙間からみえ、そこからの臭いかも知れないと思いながらも念のため用心しながら進んだ。
家の脇から周囲を覗く。
家の周りには誰も見当たらなかった。
手を伸ばせば玄関のドアノブが届く位置。
鍵はポケットにある。
家の脇からそっと顔をのぞかせドアノブの位置を確認した。
うそだろ!!!
僕は心の中で大声を上げた。
玄関が開いていた。
出掛ける時に慌てていた事を思い出す。
鍵を閉め忘れた事に気付いた。
ガタガタン
家の中から小さく何かが何かにぶつかっている音がする…明らかに何か中にいる。
父さんと母さんかもしれない…当然“騒がしい夜”に帰って来ていたとしてもおかしくない…
どうする?予想だと明日、父さんは出勤時間に家を出る筈…それまでどこかに潜伏出来るか?
いや、予想はあくまでも予想だ…また父さん達を追い出したほうがいい…今の僕等に帰る場所は無い。
意を決し、彼女を背負ったまま辺りを気にしつつ玄関の中に目をやる。
どこにいる?父さん、母さん…
玄関から正面に伸びる廊下には二人の姿は無かった…急いで玄関の中に入り扉を閉め鍵を掛けた。
扉脇の下駄箱の横に立て掛けてあったバットはまだそこにあった。ここ数日何度も手にした相棒だ…左手で掴み取ると両手でしっかり握り締める。
靴を履いたまま家に上がり、右手に見えるリビングの入口へ忍び足で向かった。
リビングから気配がする…いる…それも複数の足音がする…
父さんと母さんは一緒に縛り付け母さんは下半身が無いので足は2本の筈だから、それ以外にもいるって事だ…
誰がいる?リビングを覗き込む…カビ臭い臭いが鼻をついた…さっき嗅いだ臭いがまだ鼻に残ってるのかと思っていたけれど…どうやら違った様だ…
そこで見たものは壮絶な光景。
足の無い母さんを背負った顎の無い血だらけの父さんがテレビの下にあるビデオデッキに指を突っ込んでいる。
腐乱し虫を垂らした五十嵐さん夫妻が冷蔵庫を荒らし飲めもしない缶ビールを口に運ぶ。
…4人がリビングで思い思いの行動をしている!!
どことなく愉しそうに見えた…
五十嵐さん夫婦は母さんとは園芸友達だった…
驚きで息をのんでいる僕を、父さんに括り着けられている母さんが見つめていた…
(続く)
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