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自作ゾンビ小説の草稿投稿中。
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いらっしゃいませ。


自作のゾンビ物語の草稿を投稿中です。
予定では4日間の出来事として書いて
いますが3年も経つと言うのにようやく
3日目。それでもめげずにやって来れた
のは読んでくれる方がいらっしゃるから
こそと感謝しています。今後も感想なり
コメント頂けますと非常にやる気と
励みになります。宜しければ一言でも
添えて頂けますと嬉しいです。
自作ゾンビ物語。
[portrait of the dead]

めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
スペシャル企画。
不定期更新
◆ZOMBIE vs. BABY◆


「生ける屍対赤児/目次」
「産まれて間もない新生児」と
「死して間もないゾンビ」との比較検証。
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南瓜金助 (みなみうりごんすけ)
性別:
男性
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別HNカボチャスキのお送りします
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
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[portrait of the dead]




「とうさん…それが父さんの出した結論なのか?」

 

彼女の父親の言い放った“化け物”発言にかなり困惑した僕を横目に彼女のお兄さんはそう問いただす。

 

「化け物呼ばわりするなんて…あんなに理子を可愛がっていたじゃないか。死んでいるとは言え家族じゃないのか?」

 

「理一お前はこいつらの恐ろしさを見た事があるのか?喰らうんだぞ?私達人間を…いいか?私の知っている死というのは本来静粛で悲痛に満ちている存在だった。しかしどうだ?この騒々しさ、それに憎しみを向けてしまう程の嫌悪感…これは最早死とは異なった害に他ならない。人間でもない、ましてや死でもない連中…どうしてそんな連中と共に暮らせよう…例えそれが死だとして、なおさら私は生きている家族や友の、かけがえのない命を護らなくてはならない。それらを危険にさらしてまで共にいなくてはならない理由もみつけられない。」

 

ドスン…

 

父親の声に呼応するかの様に新たな死の形を示した彼女が床に落ちた音。

僕とお兄さんが屋敷に運びこんだ担架の上から、寝袋に入った状態で寝かせられた彼女が身をくねらせた拍子に担架から転げ落ちた。時折彼女に被せたヘルメットがガコンガコンと硬い床にあたり屋敷内に響く。

 

深緑色の寝袋は彼女が中でもがく度に巨大な芋虫がのたうち回っている様に見えた。僕とお兄さんは担架に戻そうと慌てて屈み込み簡易担架を床に降ろし彼女を載せようとする。

 

「理子…大丈夫だ。大人しくしてくれ…父さんもいずれ解ってくれる…静かに暮らそう。昔みたいに…一緒に…」

まるで諭すかのように理子に声をかけるお兄さん。

彼女のもがく力で閉められたチャックの歯がほつれだした。

僕は彼女を寝袋に入れた時に彼女を縛らずそのまま入れた事を思い出す。
ほつれたチャックの僅かな間から彼女の片方しか無い腕が伸び出した。

 

「何をしている!! は…早くその化け物を放り出せ!!」

父親の声は震え、恐怖におののいている様だ。

僕とお兄さんはチャックの壊れた寝袋を押さえ込むとその反動からか、彼女が寝袋から滑り出てしまい蛇の様にうねりながら全貌を見せた。

 

黒いフルフェイスのヘルメットからは細く長く伸びた茶色がかった髪が伸び、白いブラウスは背中がビリビリに破れ、その左袖は失った左腕の代わりにたなびいた。スカートも破れていてその下からは緑色のジャージーのズボンが覗く。

 

僕とお兄さんは彼女の動向を警戒しながら彼女を抑えようと身構える。ゆっくりと起き上がる彼女…ヘルメットの留め具がしっかりと嵌っていなかったのか、頭をもたげた拍子に外れ、猿ぐつわを噛まされうつろな灰色の目を持った顔を露にしながら立ち上がった。

 

だめだ…そんな格好でお父さんに会っては…最悪だ…

この無残な状態を示す彼女の全貌は事の悲惨さを示すには充分すぎた。

 

「理子…なぜ…どうしてそんな姿を私に見せる…許してやっただろ?あの高校に進学する事を…私の意見を聞かずに行きたがった高校で…お前は死んだ…私を責めているのか?なぜ、もっと強くお前を説得しなかったのかと…」

 

彼女のお父さんの声はさっきまでのしっかりとした発声では無くなっていた。彼女はその声のする方向へ一歩一歩歩みを進める。父親は肩を落とし、出て来た部屋のドアにもたれ掛かると、ふらつく足下を堪える様にその横に飾られた葉の大きな幹の太い観葉植物に手を懸けた。

 

彼女はまっすぐに父親に向かって進む。生前仲が良かったと言う父親の元へ。憶えているのかい?父さんを…。ここは、君の家だ。

 

父親の背後から人影が見えた瞬間、静まり返った屋敷に叫び声が響く。

 

「きゃーーーーーーーっ!!!」

「母さん!! 母さんはまだ見ない方が…」

悲鳴の主は彼女の母親らしい…お兄さんは彼女の姿を母親に見せてはまずいと判断し母親の元へ駆け寄った。

母親の悲鳴に我に帰った父親は観葉植物の太い幹を強く握ると近づく彼女に向かって鉢植えごと振りかぶっていた。

 

「理子…お前には失望した…」

父親の嘆く声

「父さん?」

母親を抱えながら父親の方を振り向いた兄。

次第に大きな鉢が彼女の頭上から振り降ろされる。

あんな物が彼女の頭に当たったら陥没どころでは済まない!!!

僕は彼女に向かって飛びつく。

鉢は床まで振り下ろされ粉々に砕け、入っていた土は辺りに散乱した。

 

僕に飛びつかれた彼女はその勢いで倒れ込み、鉢の一撃を免れた。

間一髪、僕も被害を受けずに鉢をよけきった。

父親は観葉植物の太い幹を握ったまま仁王立ちで、僕と彼女を見下ろしていた。

再び植物が僕らの頭上に掲げられる。

 

「父さん、いい加減にしろ!! そのコまで殺すきか!!」

彼女のお兄さんが掲げられた幹を掴み、僕らに振り下ろされるのを防いだ。

「き…君!! すまない、理子を連れて一旦屋敷の外へ出てくれないか!?このままでは話し合いにもならない!!」

「わ…解りました!!」

僕は倒れ込んだ彼女を背中から抱え込み、持ち上げ彼女の足を引きずる様にしながら屋敷の外まで後退りしながら避難した。屋敷の大きな扉が目の前で閉まる。勢いでまた父親が襲いかかって来そうなので、そのまま石畳を進み広々とした庭の中心まで移動してしゃがみ込んだ。

 

「僕には解らない…君の父さんが…言ってたよね?失望したって…何に対して失望した?何処に望みを失った?そりゃあ生前とは印象は違うだろうけど…君はこんなにも存在しているのに…」

 

彼女を抱えている僕の両手は事態に驚きを隠せず小刻みに震えていた。丁度僕の胸元にある彼女の顔は上を向きながら僕を見つめていた。彼女は首を揺らし僕の腕に噛み付くような仕草をし始めたので猿ぐつわの具合を確かめ安全を確認し気を落ち着かせた。
 

何処からか微かにピアノの音が聞こえ始めた。耳にした事のある曲…ちょうちょ?

すぐさま僅かながら歌声が聞こえる。子供たちの声…合唱している様だ。

音は僕がここへやって来た時に彼女の両親が立っていたガラス窓の部屋から洩れている様だった。この音量なら塀の外には聞こえないだろう。ここからは見えないが、子供がいるらしい…しかも大勢。

 

子供たちの歌声に絆され和んでいると、お兄さんが僕らの元にやって来た。手には彼女に被せていたヘルメットと彼女の着替え、そしてよし子さんが用意したと思われる飲み物を持って。

 

「大丈夫だったかい?君…」

「はい、怪我もありません。」

「私が甘かった…父があそこまで拒むとは…すまない。」

「いえ…僕がちゃんとした姿でしっかり送り届けていればまだ動揺させなかったんじゃないかって…」

「いや…どのみち同じ結果になっただろう。君に落ち度はない。」

「ガレージに…理子を運ぼう。このままじゃ可哀相だし、着替えを持って来た。」

僕はお兄さんからヘ彼女の着替えと飲み物を渡される。お兄さんは彼女にヘルメットを被せ、抱きかかえるとガレージに向かって歩き出した。僕もその後に続く。飲み物は有り難かった。僕の家をを出てから水分を一切口にしていない。グラスの中のオレンジジュースをささっていたストローで吸い上げた。オレンジの酸味と甘さが口内を刺激し冷たさが胃に到達する。
緊張がゆるんだせいか便意をもよおしてしまいトイレを借りれないか告げるとガレージにあると教えてくれた。

ガレージまでまだ距離がある。気になった歌声の事を聞いてみた。
「あの…子供がいるんですか?」

「あぁ、母がやっている音楽教室の生徒達だ。この異常事態に帰す事も出来ず預かっている。ご両親に連絡が取れなくなっている子がほとんどで…」

「すみません…状況知らずに押し入ってしまったようですね。子供たちの事知っていたら、彼女の扱いも考えて…」

「理子がこうなてしまっても身内として引き取った方がいいと私は思っている。理子がどこかで人を傷つけていると考えたくもないし、理子は優しい娘だったから生きていれば自身もそう感じているに違いない。“自分の行動に責任を取れないならば生きる事は許されない”…と、常に父に言い聞かされていた事もある。父もそれを心情に生きる人間なので、今の理子に対しても多分そう言った意味合いで向き合ったんだと思う…」

「そうだったんですか…」
 

理子のお父さんが言った“失望した”の意味が分かったような気がした。
 

「今は子供たちの命が優先だ。預かっている子供たちに万が一の事があってはならない。さっきのような事が起こる可能性があるのだとしたら、強制的に家からに排除した方が得策だろう。でも、ああいった性格だから本来なら理子は引き取ったかもしれない…どうにかして理子自身に責任を取らせようと…」

お兄さんの言葉で僕は屋敷の様子が気になり歩きながら振り返って屋敷を眺めた。玄関から右側に見える大きな窓枠からはさっき見かけた母親が父親に寄り添って二人立ち並びこちらを心配そうに見ている姿が目に入った。家族にも、考え方にも、いろいろある…。

 

…でも否定出来ない真実が一つあった。

 

死を、恐れている。

身近な事として…我が身に降り掛かる恐ろしい出来事として。

 

再びガレージに入ると、お兄さんはジャガーの後ろのトランクを開けそこへ彼女をそっと寝かせるとトランクを閉めた。

「ここなら出て動き回る事もないだろう。」

「あ、この服…着替えですよね?…僕、もう邪魔ですよね?用事が済んだので僕はこれで失礼しますので…あの…トイレを…」

僕は着替え用の服をお兄さんに渡し、残っていたオレンジジュースを一気に飲み干してグラスをテーブルに置くと、ガレージの片隅にあったトイレを借りる事にした。
便座に座り一息つく。
そう言えば水洗トイレの排水の音がやつらに聞こえそうでトイレ使用禁止だったな。ここは安心して流せそうだ。

排泄物は水洗の激しい唸り声と共に見えなくなると、ゆくゆくは失せる事になる自分自身と重なった。
もう僕の出る幕ではない…正直彼女のこれから先が心配になったが、ここは彼女の家、彼女の部屋が有り、今まで生きて来た思い出とその証があり、彼女を護ってくれる理解あるお兄さんも居る…寂しくなるけれど彼女を送り届けると決めた時に覚悟は決めた。

 全てやり終えた…僕はトイレから出て、自分の家に帰る為にガレージの出口に向かう。
「それでは、ボクはこれで失礼します。」

「いや、まだだ…待ってくれ。君に見せたい物があるんだ。私について来てくれ。」

「え?…は…はい…」
お兄さんに呼び止められるとは思わなかったので、何事かと驚いたけれど、僕に何か出来るのであればお手伝いした方がよいと考え、お兄さんの後に着いて行き再び屋敷に足を踏み入れた。

先程一悶着あって汚れた床をよし子さんが箒で履いていた。よし子さんと目が合い軽くお辞儀をすると、僕の視線はその後ろに立っていた彼女の父親を捉えた。僕を凝視する眼…問題を大きくしてくれたなと言われているかのように感じる眼。

 

「こっちだ…気にしなくていい…」

お兄さんは父親の視線に気をとられていた僕を促す様に手招くと玄関から真正面にある大きな階段を上り2階部分に上がる。僕はその後に続き、左手に伸びる回廊とも呼べそうな廊下を進みいくつかのドアを通り越して突き当たりで立ち止まった。左側にはドアがありドアノブに手をかけお兄さんが言う。

「理子の部屋だ。」
 

僕が導かれたのは彼女の部屋だった。

緊張し始めた…憧れの彼女の部屋の前に立っている。

扉が開けられお兄さんが僕を部屋の中に誘う

「さぁ、入って。」

 

ハートマークの部屋だった。クリーム色の壁に囲まれ、床と左側にあるカーテンは桜の花を思わせる淡いピンク色で、そのいたる所に10センチ大でうっすらといくつものハートマークが模様として描かれていた。ドアから入ると左に木目調の洋服ダンス、正面にはこちらも木目調の勉強机と本棚、その右にベッド。それぞれ木の部分にはハートマークがレリーフとなって彫られていた。そして壁には大小様々な沢山の額装された写真が飾られている。

 

「カメラマンになるのが夢だった」

お兄さんがそれぞれの写真に目を移しながら話し始める。

「写真部があったのは通っていた君のいた学校だけだったんだ…理子はそこが気に入って入学を決めた。そう言えば父さんはもっと安全性の高い私立校を進めていた…もしの話は意味ないが、父さんの言う通り私立を受けていればこの事態は避けられたのかもしれない…父さんその事も悔やんでいるみたいだったな…」
 

ハートマークが好き…憧れの写真家…父親の意見を拒むくらいの意志の強さ。僕の知らない彼女に会えた事で僕は秘かに幸福感を感じていた。

「理子さんをここに連れて来られなかったのが残念です…生前の記憶は有るんだと思います、亡くなった人全員。だから部屋に戻れれば何か思い出すんじゃないかって…そうなれば生きていた頃に近づけるんじゃないかって…そう思っていました。」

 

「なあこれ、君じゃないかな?」
ベッドの枕元近くに飾られた写真に向かってお兄さんが指を指している。写真は左側に彼女を置いて友達と合わせて三人がバストアップで記念撮影の様にピース等して楽しそうに写っていた。その写真の左端…彼女の脇の下あたりに小さく辛うじて顔がわかるくらいの僕の姿が写っていた。

 

「はい…僕ですね、これ…」

「理子、もしかすると、君に興味があったんじゃ…?」

「え?…ど…どういう意味ですか?」

「よし子さんも言っていたんだが枕元に男性の写り込んでいる写真を選ぶなんて…」

「ぐ…偶然じゃないですかね?」

それがもし本当ならば正直嬉しいのは確か。しかし僕も彼女も一切接点を持たず話した事も無いし僕のどこに惹かれたのかすら想像出来ないので困った。だとしても実は僕も理子さんが好きなので保護したんですとはさすがに言える訳も無く口ごもる。

「私もよし子さんもこの写真で君を見て知っていたんだ…さっき、よし子さんが理子の着替えをここに取りに入って気が付いたと聞いて…」

偶然か否かは知る術はもう無い…それでも彼女の目にぼくが留まっていたのなら嬉しいに決まっている。複雑な思いを抱きながら恥ずかしくなり言葉をはぐらかした。

 

「写真が好きだったんですね、理子さん…カメラが馴染みある一部分だったんですね。死者達は日頃の馴染みある行動や習慣を繰り返して、生きていた者の死を示しているんだと僕は思うんです…」

「君は死者達の事をよく観察している…彼らの存在を真っ先に理解出来ているのかもしれない。」

「自分が生き残る為には必要な事かと思って、観察しているだけです…」
僕がやつらを理解出来ているのかは自信は無いけれど、ただただ記憶が残っていると信じたい…それだけの思いで僕はお兄さんにこう告げていた。

 

「理子さん…カメラを向けると笑顔を作るんです、一瞬。」

 

お兄さんは困惑した顔をすると少し考え込み、僕にこう言った。
 

 

「その笑顔を守れるのは、君だけかも知れない。」




(続く)
 

第33章へ。
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