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自作ゾンビ小説の草稿投稿中。
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いらっしゃいませ。


自作のゾンビ物語の草稿を投稿中です。
予定では4日間の出来事として書いて
いますが3年も経つと言うのにようやく
3日目。それでもめげずにやって来れた
のは読んでくれる方がいらっしゃるから
こそと感謝しています。今後も感想なり
コメント頂けますと非常にやる気と
励みになります。宜しければ一言でも
添えて頂けますと嬉しいです。
自作ゾンビ物語。
[portrait of the dead]

めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
スペシャル企画。
不定期更新
◆ZOMBIE vs. BABY◆


「生ける屍対赤児/目次」
「産まれて間もない新生児」と
「死して間もないゾンビ」との比較検証。
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南瓜金助 (みなみうりごんすけ)
性別:
男性
自己紹介:
別HNカボチャスキのお送りします
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
憧れの人はフック船長と芹沢博士に
スネーク・プリスキンとDr.ルーミス。
彼らに多大なる恩恵を授かりました。
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→目次ページはコチラから

[portrait of the dead]


母さんを風呂場に閉じ込めた後、
僕は母さんに噛まれてしまった父さんの様子を見にリビングへ向かった。
途中の廊下は玄関口からまき散らされた父さんの血の海が
外からの街灯の明かりだけでも異様な輝きを放っていた。
小走りに進んでいたので血を踏みつけた時に滑って危うく転び
そうになる。危ない…こんな時に怪我なんてしたらある意味致命傷だ。

致命傷…
そうだ…父さんは本当に後1時間くらいで死んでしまうのだろうか…。

体勢を立て直しリビングに入ると父さんの姿は無く、
血の跡が点々と寝室に繋がっていた。寝室を覗く。
父さんの背中が見える。上着を脱ぎ、上半身は裸だ。
ベッドの下に備え付けられた引き出しの中から
洗ってからしまわれていたまっ白なシーツを抜き出して
母さんに噛まれた左腕の傷に押し当てていた。
傷口から止めどなく流れる血がまっ白なシーツを赤く染めている。
僕は救急箱をリビングの食器棚から探し出し、兎に角消毒を
した方がいいと思い寝室のなつめ球を点けるも明かりは足りない。
まだ騒がしい夜の最中では窓を塞いだとしても
僅かに漏れているかも知れない明かりがあっては
やつらに気付かれてしまう恐れもある。
なにか変わりはないかと眼を配るとベッドの枕元に備え付けられた
蛍光灯を見つけて点けると、ベッドの枕元辺りだけ
明るくなった。安全とは言えないが部屋全体を明るくするよりは
まだいいだろう。父さんに赤く染まったシーツを
ずらしてもらい傷口を見た。

酷い…腕の内側の肉が幅5センチ程の大きさでえぐり取られている。
こんな傷…手当てした事なんてない。どうすれば血が止まる?
まずは今だ溢れ出す血液を止めなくては。
僕はまっ白なシーツの端を引き裂くと紐状にして父さんの腕の根元を
きつく縛り止めた。溢れ出る流血は染み出る程度になる。
僕は消毒液を救急箱から出し蓋を開けると気が動転していてか、
そのまま父さんの傷口にかけてしまった。勢いよく泡が溢れ出し、
父さんは歯を食いしばって声をあげそうになるのを堪えていた。
父さんの額に汗が溢れ出る。相当な痛みに気絶しそうな勢いだ。

「ご…ごめん!!」
「い…いや…いいから…包帯を巻いてくれ…」
「包帯が無いんだ…このシーツでいいいかな?」
「構わん…何でもいい巻いておいてくれ」

そうだ…
包帯は彼女に全部使ってしまった。
こんな非常時を考えもせずに。
僕はシーツを包帯の様な帯状に裂くと、
それを父さんの傷口に巻き付け縛り止める。
一段落。
2人とも落ち着きを取り戻すまで暫く沈黙が続いた。

僕はいたたまれず、万が一を望み家の固定電話から119を押した。
呼び出し音が鳴るだけでつながる気配がない。
受話器を置きふと昼間聞いた消防士たちののろしをあげればいいと
言う言葉が頭をよぎったが火を焚けば奴らにも気が付かれるのは
必至だろうと考えをかき消した。電話番号を教えてもらった事を
思い出し、メモを探しに二階へ上がろうと思った矢先
痛いくらいの力強さで握りつけて来る腕の感触が
僕の右肩の食い込んでいた。この力強さ…身に憶えがある…
彼女が僕の腕を掴んだときの感触に似ていた。
いま動けるのは僕と父さんだけだ…まさか、既に父さんは!!
慌てて振り向くと薄明かりに照らされた父さんの姿が僕の目に入る。
「宏幸…」と声が聞こた。

「す…すまない、こんな時に…なんてざまだ」
薄明かりの中、父さんの姿が僕の目の前に浮かんでいる。
「父さん、噛まれちまったな…」間の悪そうに話し続ける。
「死ぬって話だよな、噛まれると。」
「うん…そう言っていたけど…TVでは…」
「本当かな…ほら1時間で死ぬっていう話はさ…」
「判らない…僕はこんなの初めてだしそれを見ていないから…」

…信じられるか?
目の前でまだ生きている人間が1時間後に死ぬなんて。

「こんな形で死ぬなんて思いもよらなかったよ…おとといまでは。
今、死って言う事は…やつらの事を言うんだよな?」

そう死の形が変わった。今までの死は死ではなくなったんだ。

「死は誰にでも訪れるものだった、それは変わらない。
もし死の新しい姿が今の徘徊する姿であると決まったのならば、
それが摂理と言うものなのだろう、逆らえる余地は無い。
確かなのはひとつ…死ぬのは、どうであれ、つらいな。」

父さんの体は何かを堪えるかのように震えだしていた。
僕はかける言葉が見つからずに途方に暮れている。
残された後1時間あまりでどう人生を終えればいいのだろうか…。
想像もできない。今ふと思ったのは、父さんが死んでしまったら、
この家には死体が三体もあると言う事だった。不謹慎かも
しれないけれど、今、この世界で起きている事を考えると、
この状況はあまりにも危険すぎる。
かと言って父さんに出て行ってくれとは言えるわけも無い…。
所がそんな僕の心を見透かしたかのように父さんは口を開いた。

「お前は死ぬな。これは父親としての最後の望みだ。
母さんも同じ気持ちだろう。私は、これから
母さんとここを出て行く…。」

そのセリフに自分がそう考えてしまった事への
いらだちを憶え僕はこう言っていた。
「だ…大丈夫だよ…さ、三人くらい面倒見られるよ」
「今、言葉に詰まったな?はは…死んでまでおまえに面倒見ろとは
言わないよ。死人は死人らしく、死後の世界で暮らすさ。」
そう言いながら父さんは僕の肩をポンと叩くと
廊下を移動し風呂場の方へ向かった。
「どうするの?」父さんは僕の問いにこう答えた。
「母さんの様子を見て来る。支度だ、お洒落してお出掛けの準備だよ。」

父さんが母さんのいる風呂場ヘ向かったのを言葉無く見送ると
僕は無意識に寝室へ向かい、血に染まった真っ白だったシーツの
端切れをまとめキッチンのゴミ箱へ詰める。リビングを抜け
血の海の廊下を渡るとトイレからバケツと雑巾を運び出し
再びキッチンへ戻り、流し台でバケツに水を張って
廊下の血液を拭う準備をしていた。
雑巾で廊下にまき散らされた血の海を拭き取る。
バケツの水は一瞬にして赤く染まった。
一心不乱に床を磨き終えると、騒がしい夜は過ぎ去り、
いつの間にかシンと静まり返っていた。

カチャン…

ふと現実に呼び戻され我に帰った。
風呂場の扉が開けられた音が鮮烈に耳に飛び込んだ。
あれからどのくらいが経った?!
父さんは?! まだ生きているのか?!

僕は廊下の突き当たりにある風呂場へ繋がるドアを注意深く見つめた。
ドアがゆっくりと開く。中から現われたのは上半身にバスタオルを巻き
付けられた母さんを抱えて現われた父さんだった。
まだ生きていた…一瞬安堵するも
父さんの様子が不自然さに気が付き青ざめる。

「宏幸、噛まれた方の腕が固まって動かないんだ。
母さんをベッドに寝かせるのを手伝ってくれないか?
大丈夫、母さんの腰を持って一緒に運んでくれればいい」

おそらく父さんの腕は母さんを抱えながら洗っている状態で
前へ延ばしたまま動かなくなったらしい。噛まれたせいなのか
左腕は包帯の外の組織まで緑の様な紫に変色させていて、
固まって動かなくなると言う事は死後硬直を連想させた。

小走りに2人に近づくと母さんの口にはバスタオルを千切った布で
猿ぐつわが噛まされている事に気が付いた。顔からは血の後が
キレイに拭かれ母さんの面影が見て取れる。
うつろな眼付きではあったけれどまぎれもなく母さんだった。
巻かれたバスタオルの猿ぐつわの下はやつらに噛まれてしまって
両頬の肉がえぐられているようで、母さんが上下に口を動かす度に
肉の線維が引っ張られたような傷口が見え隠れしていた。

僕は母さんの腰辺りを抱える。
腰辺り…そうだった…やつらに喰われ母さんには腰から下が
無かったんだ。母さんの両腕はゆっくりと動かされていたけれど
それを体勢を反らしたりと振りほどきつつ、父さんに連れられるまま
寝室のベッドへと母さんを寝かせた。

「ありがとう、宏幸。なにかあったらまた呼ぶから。」
そう言いながら父さんは寝室の脇にある洋服ダンスへ向かい
母さんの服を探し始めた。すぐに母さんのお気に入りのワンピースを
取り出すと父さんはそれを着せようと母さんの体に巻き付けてある
バスタオルを使える片方の手で外そうとするが思うように外せずにいて、
心配で寝室の扉から様子をうかがっていた僕はたまらず手伝いに入った。

僕は体に巻かれていたバスタオルを解いた。
「父さん、ブラジャーしようよ。」
母さんの下半身の無い裸体に膨らんだ乳房は記憶にすら
残っていなかったが、僕を育ててくれた事への感謝に、
気が付けばぽろぽろと涙をこぼしていた。
「ありがとう母さん、僕を育ててくれて…」
父さんがブラジャーを探し出して来てふくよかな乳房に当てる。
「母さんの魂は今どこにいようと、その言葉は必ず届いている。」
そう言ってくれた。

僕は涙を拭い、父さんと2人で母さんにワンピースを着せた。
腰から下が無い母さんなので、
ワンピースのスカートの裾を縛り止め大きなリボン状にする。
父さんが母さんを自分に背を付かせるように抱えた。

「よし、後は母さんを私に解けないようにしっかりと縛り止めてくれ。
二度と母さんと離れないようにな、きつくしっかり留めるんだぞ。」
「う、うん、わかったよ。」
僕は包帯代わりに裂かれた真っ白なシーツの残りを
ロープ状にして父さんと母さんをきつく縛り付け始めた。

「苦しくはない?」
「いや、そんな事は気にするな。兎に角解けないくらいに縛れ。
急いだ方がいい…鼓動が、脈拍が一瞬止まる…おかしくなって来たぞ。」
気が付けば父さんの左腕の変色は肩を抜け心臓の近くまで迫っている
様だった。延ばされたままのその腕は指先まで変色が進み、
触ってみると石のように硬い。この硬直が心臓や、肺、脳に達する
までの時間がおそらくは1時間程度なのだろう。

「これでいいかな…」
父さんと母さんを縛りとめ終える。
父さんは右腕で力を込め引っ張ったりと縛られた具合をたしかめた。

「よし、いいだろう…しまった、私が上半身裸だったな。」
そう言って微笑みながら満足そうに玄関に向かった。


本当にお別れなんだよね…父さん…母さん。
僕は玄関まで付いて行き、見送る覚悟をしていた。

外は既に街灯の明かりが灯り夜を告げている。
「宏幸、すまん、私にも猿ぐつわをしてくれ、
誰にも噛み付かないようにな。」
「うん…」
破ったシーツの残りを取って戻った時には
父さんは玄関の敷居に座り壁にもたれ掛かっていた。
「父さん?」
恐る恐る近づく。
「あぁ、早いとこやってくれ…やばそうだ…。」
僕は父さんの口にシーツで作った猿ぐつわをかませ
頭の後ろで縛り始めた。母さんは背後の父さんの事が気になるらしく
首をさっきから後ろに向けようを頭を回転させようとしている。
父さんの猿ぐつわを縛り止めた瞬間

ボキンッ

と言う音が玄関に響いた。
何の音か気になって父さんの背中越しに母さんを見ると
母さんの首が180度回り父さんの顔と向かい合わせになっていた!!
そうだ、彼女も首輪をはめた時、物凄い力で目標へと動き
首が折れそうになっていた。やつらの怪力は半端じゃない。
母さんの口がゆっくり開き始めた。猿ぐつわをしているから
気にも留めなかったがそれが間違いだった。

両頬のかじられた傷のせいで皮膚が弱くなっていて
筋張った筋肉がブチブチブチと音をたて切れ、
そのまま大きく口が裂ける。

瞬間、母さんの口は父さんの喉笛に噛み付き
肉を喰らい始めた!!

一瞬の出来事だった…。


(続く)


第22章へ


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