自作ゾンビ小説の草稿投稿中。
いらっしゃいませ。
自作のゾンビ物語の草稿を投稿中です。
予定では4日間の出来事として書いて
いますが3年も経つと言うのにようやく
3日目。それでもめげずにやって来れた
のは読んでくれる方がいらっしゃるから
こそと感謝しています。今後も感想なり
コメント頂けますと非常にやる気と
励みになります。宜しければ一言でも
添えて頂けますと嬉しいです。
自作ゾンビ物語。
[portrait of the dead]
めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
プロフィール
HN:
南瓜金助 (みなみうりごんすけ)
HP:
性別:
男性
自己紹介:
別HNカボチャスキのお送りします
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
憧れの人はフック船長と芹沢博士に
スネーク・プリスキンとDr.ルーミス。
彼らに多大なる恩恵を授かりました。
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
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[portrait of the dead]
消防車の中から辺りを見回す消防士達…
只ならぬ張り詰めた緊張感が伝わってくる。
消防車から降りられず車内に閉じ込められた僕は
状況も飲み込めず、目の前にあるのに辿り付けない僕の家の玄関を
おあずけされた犬の様な心境で眺めていた。
死の臭い?さっきのが?
一瞬嗅いだその臭いは僕にはカビ臭い刺激臭としか感じなかったけれど
三人の消防士はその中に紛れた死の臭いを経験より得た情報から
嗅ぎ取ったのかも知れない。僕は自分の記憶に刻まれた似た臭いを
手繰ると真っ先に思い浮かんだのは土を掘り返した時の匂いだった。
死の臭いとはほど遠い気がする。さらに手繰る。
死の臭い…人の臭い…死んだ肉の臭い…
あれは?何年か前に偶然見つけた、洋服箪笥にしまってあった
手のひらに乗るほどの桐の小箱の中に入っていた、
干からびた僕の臍の尾から出ていた臭い…それはどうだ?
…一番近いのはこれだろうか?確かそれもカビ臭かった印象だったけれど
ここまで強烈な臭いではなかった気がする…。
「これまでに見たことのないような強烈なやつがどこかにいる…」
消防士がそう呟く。自分の家の玄関を観ていた僕は
隣の五十嵐さんの家の垣根がワサワサと揺れたのに気が付いた。
「あ、あそこ、なにか動きました…」 指で示した先は
さっき僕が家の裏側へ抜けた時に通った延び放題の垣根の枝の辺りだ。
揺れる垣根は徐々にこちらへと移動してくる。
その速度から間違いなくやつらだと思えた。そんな所に…
さっき通った時、実はかなりやばかったのか?…危ない。
揺れる垣根は僕達の乗った消防車の止まっている道に面した垣根で
止まった。垣根が徐々に分けられると、ゆっくりとそいつは現れた。
まるでミイラの様な干からびた顔…
かつて目が在ったであろうそのくぼみからは
ミミズが何匹も蠢き、開かれた口からは蛆みたいな幼虫や
ダンゴムシにムカデ、マイマイカブリに、
見た事もない様な黒く楕円形で蛇腹状の虫までボロボロ落ち始める。
まるで体が虫で出来ているかと思わせるくらいの姿に背筋が
凍りついた…。目の前にあるのは間違いなく、死だ…猛烈に、驚異的に。
これが生物としての自然に還ると言った本来の死の姿だとするなら
本来の死を拒み、灰と煙になろうとする僕等に、その存在を
見せつけて来る様にも思えた。
僕等は死して更に自然を拒絶している事に気が付く。
しかしそんな姿で何故動けるのだろう。…不可解極まりない。
脳ミソなんて虫に喰われて無くなっているだろうし…
だとしたら狂暴な存在には間違いない?
近づかない方が身の為だ…。
ちょっと待てよ?…
まさか、騒がしい夜に帰宅するんじゃ…?
「こんなやつ初めて見る…」「あぁ…。」
消防士のその言葉に僕の思考は途切れた。
消防士達も初めて見るその姿に全員がまた絶句した。
垣根から抜け出て消防車にゆっくり近づいて来るそいつに見入る。
つなぎの様な作業着姿で胸にはバッジが付けられていた。バッジに
刻まれた名前を目を凝らしてみると、“五十嵐”と記されていた。
「い…五十嵐さんだ!!、隣の人です。
最近見かけなかったけど… まさかこんな…」
「そうか…この様子じゃあ、殺されて埋められてたようだな…」
確かにつなぎには刃物で刺されたような裂け目と
黒ずんだ血がしみ込んだ様な跡が確認出来る。その脇で
もう一度垣根が揺れた。目を向けると再び分けられた垣根から
現れたのはもう一体のやつら…汚れて判りにくいが黄色地に白い花柄の
あしらわれたワンピースを着て、長い黒髪の、同じくミイラのような
姿をした…たぶん五十嵐さんの奥さんだろう。
胸の辺りにはご主人と同じよう刺し傷が数カ所、血の滲んだ跡。
二人してこんな姿に…一体何があったんだろうか。
死んでしまった五十嵐さん夫婦は消防車まで辿り着くと
4本の腕を延ばし窓ガラスに滑らせて来た。
こんな、口が虫達で塞がれている状態でも僕らを喰らおうとしている…。
喰われた僕らの肉は一体どこへ収まると言うんだ…。
「少年、家に帰るのは後だ。こいつらを一端まかなければ危険だ。
彼女には心細いだろうがまだ待っててもらうしかない…いいな。」
「あ、はい…わかりました。」
消防士達が危険から守ってくれようとしているのに、
家で待つのは実は危険な存在の彼女だと言うことに、
なにか後ろめたい感覚があったが、消防士達に彼女と言われる度に
照れくさい感情も起きていた。嫌な気はしない…。むしろ嬉しさに近い。
消防車はゆっくりとバックし始めるとやつらとなった五十嵐さん夫婦も
ゆっくりと消防車に付いて来た。10メートル程バックのままさがると
消防車は十字路に辿り着き、方向を変え前進し、さっき渡った橋を
渡りきった所で停車した。後方に五十嵐さん夫婦がついて来ているのを
見る。周りの道路を見渡すと他のやつらの姿はまだ見当たらない。
橋の渡された川の中に目を向けると、さっき土手にいた時に
僕に近づいて来た3体のやつらがまだ川の中にいて、
消防車に気が付いたのか15m程先から歩いて来るのが見えた。
この橋を渡りきり脇から延びるサイクリング道路を進めば僕の家の裏手に
辿り着くんだ…。そう思うと気が焦った。
「僕、ここからサイクリング道路を走って帰ります。」
「本気か?確かに裏道からなら帰れそうだが…彼女が心配なのか?」
「は、はい…早く…戻ってあげないと…」
「そうか、じゃあここまでだ…」「はい。有り難う御座居ました。」
「友達はこれから確認しに行く。」「お願いします。」
消防車は渡りきった橋をバックして渡ってくれた。
背後から近づいていた五十嵐さん夫婦は10m程先だ。行ける。
「じゃあ、行きます。」消防士達に別れを告げる。
「気を付けろ。生き延びろよ。」「はい…。」
僕は消防車を降りると目の前から延びているサイクリング道路を
見渡した。サイクリング道路上には誰もいない。
500m先には僕の家だ。消防車は僕を気遣ってやつらの気を引く為に
鐘を鳴らし始め移動を開始した。深々とお辞儀をして心の中で
礼を言うと、僕は走り出し一気に家路を急いだ。
自分の家の裏側に辿り着いた僕は、家とサイクリング道路を隔てている
フェンスをよじ登り、家の裏側の敷地内から今朝とは逆順路で
玄関をめざした。家の脇に入り五十嵐さん宅から延びた垣根の枝を
くぐりながら進むと、さっき嗅いだ死の臭いと言われたものと同じ
異臭が漂って来た。…まさか、五十嵐さん夫婦がもう戻って!?
足を止め、垣根の隙間から五十嵐さん宅の敷地内を恐る恐る覗き
様子を探る。目先には五十嵐さん宅の縁側の様な場所が見え、
裏庭の様なスペースがあって物干し台が立てられていた。
その裏庭の地面には掘り返した様な後。
そうか、ここに五十嵐さん夫婦が埋められていたんだ。
全く気が付かなかった…そんな惨劇…。そして蘇り這い出て来た…。
死の臭いには土を掘り返した時のような臭いも混ざっていた。
このせいかもしれない。僕がこの家の脇を通った時にも
ずっと土の中でもがきここから這い出ようとしていたのだろう…。
見た所、裏庭には五十嵐さん夫婦の姿も他のやつらも見当たらない。
一安心し、僕は再び家の脇を進むと目の前の通りがはっきりと見えた所で
家の壁に背をはわせ、家の脇から玄関に面した通りの様子を探ろうと
少し顔を出す。大丈夫、何もいない。僕は鍵をポケットから用意し、
その場所から手を伸ばして届く距離にあった玄関の扉のノブに
鍵を差し込んで開けると、扉をゆっくりと音を立てない様に開け、
入れる程のスペースが出来ると扉の中へ飛び込んで
また音がしないようにドアを閉め鍵を掛けた。
「ふぅ〜…」
家に入った。玄関の扉に背を着けたまま、
安堵のため息を吐くとそのまましゃがみ込む。
気が抜けたのか体が急に痛みを訴え出す。
筋肉痛を忘れていた。休ませないと、酷い事になりそうだ…。
今日はもう大人しくしていた方が良いのかもしれない。
痛む体を奮い起こし、スニーカーを脱いでリビングに向かう。
家の中は明りを点けていないので薄暗かったけれど
リビングに入るとソファーが確認出来たので
そのまま倒れ込むようにして座った。
……………?
今、僕の座っているソファーに、なにかおかしいと気付いた。
のり巻きの彼女を閉じ込めた寝室、ドアを閉め、
ソファーをその前にピタリと着け、置いた。
寝室のドアは僕の背後。
閉めた筈のドア…開いている。
ソファーはわずかに斜め。
………!!!
慌ててソファーから飛び上がった。
ソファーをずらし、開いている寝室の扉を全開に開けると
寝室へ入らずに中を見た。この位置からでも充分薄明かりの中に
ベッドと壁に挟まれたのり巻きから出た彼女の足が見える
…筈だった。
ない。彼女の足が見えない。
ベッドと壁に挟まれたのり巻きには彼女が巻かれていない。
抜け出たんだ…。僕は寝室の扉から手を延ばし
室内の明かりのスイッチを入れる。寝室へ注意深く入り、
部屋の中を確認するが彼女の姿が無い。
どこだ?彼女は?何故いない?
家を出る前に覗いた時には、彼女はのり巻きのままベッドと壁の間に
挟まれた状態で足先をもぞもぞさせていたんだ…考えるに、
ベッドと壁に挟まれたのり巻き状態の布団はうまい具合に
動かないように固定され、彼女がゆっくりと這い出るには絶妙の
嵌り具合だったのだろう。まずい…そこまで気が回らなかった…!!
彼女は今、家の中を徘徊している…どこかに。
Tシャツの猿ぐつわは喉元にずれたままで…。
僕は寝室から出ると扉を閉め、再びリビングから周りを注意深く
見渡した。彼女はどこにいる?2階?それとも父親の書斎?
父親の書斎からは点けっぱなしのパソコンの光が
開けっ放しのドアから漏れていた。
その光が何かで一瞬遮られ影が揺れる。
彼女はここだ!!…間違いない。
噛み付かれる危険を回避する為に、もう1度彼女の頭に服を
被せようと着たいたジャンバーを脱ぎ、準備をする。
僕は書斎の開いているドアに近づくと室内を覗き込んだ。
………!!!
仰天した。
全裸の彼女がそこにいた!!
死してなお艶かしいヒップラインを示した彼女の後ろ姿がそこにあった。
のり巻きから抜け出た時、身につけていた唯一の着衣だった
Yシャツも一緒に脱げてしまったようだ!!
彼女は僕に気が付いたのか、ゆっくりと体の正面をこちらに向け始めた。
すでに何度か見てしまっていても、死んでいる彼女の裸体を見るのは
彼女に意志が無い事も手伝ってか、なんとも気が引ける。
なんだこのもどかしさは…。とは言え見ない事には目測も出来ないので
しっかりと見る事にした。「ごめん…」またそんな気がして呟く。
パソコンからの明りだけでは暗くて気が付かなかったが
よく見ると父親の大事にしているデジタル一眼レフのカメラを
片方しか無い右の腕で大事そうに握り、
顔にあてレンズをこちらへ向け構えていた。
まるで写真を撮る時の様な仕草に僕は驚きと感動で
体が硬直して動けなかった。バリケードを作る時に壊さないようにと
棚から部屋の脇に移動しておいたカメラを彼女は見つけたんだ!!
パシャ。
一瞬の眩しい光とシ一ャッターの切れる音。
それが合図かのように、僕に気が付いた彼女はカメラを顔から離すと
腕はカメラの重さのまま下ろされ、パソコンの置かれた机の縁にぶつかり
カメラは手から離れ落ちて椅子のクッションの上で止まった。
その動作に僕も我に帰る。カメラを忘れた彼女の腕は僕に向けて
伸ばされると、彼女が僕に向かってゆっくりと歩き出したので、
僕は身構え彼女に近づき、頭からジャンバーを被せ、
ジャンバーの両袖を彼女の口辺りに噛ませるように縛り止めると、
彼女を後ろから抱え、リビングまで引きずってソファーへと寝かした。
相変わらず彼女の右腕は物凄い力で僕の左腕を掴み離さない。
昨日付いてしまった痣からの痛みと重なり激痛に近かったが、
近づけた勢いで彼女の首に残ったTシャツ製の猿ぐつわと
その下にあるリルの首輪を外した。
…のり巻きは有効なはず。
今の所それ以外で共存する方法は見当がつかないので
再びのり巻きを実行する事にした。それならば彼女の顔と対峙出来るし、
彼女の顔を酷くゆがめる事は、もうしたくはなかった。
僕の腕を掴んでいる彼女の手を力ずくで解くと
僕一人で寝室へ入り、内側からドアを閉め鍵をかける。
ベッドと壁の間に挟まったのり巻きの残骸を抜き取ると、
縛り止めたシーツの結び目を解きベッドに敷くと、
その上に布団を掛けた。…のり巻きの準備だ。
ガチャ…ガチャ…ガチャ…
ドアノブを回し出し、開けようとしている音がし始める。
寝室からする僅かな音に気が付いたのか
部屋の外では彼女がドアの前まで辿り着いたようだ。
時折、バンッとドアを手の平で叩いた様な音も混ざる。
そう大きな音では無いが外に洩れていないといいと祈りながら、
ベッドにシーツ、毛布、布団を掛け終え、準備は整った。
よし、後は昨日やった通りにすればいい。
僕は寝室のドアを開け、急いでベッドを乗り越えると
ドアから真正面に位置する部屋の奥で息を潜めた。
彼女が部屋へ入って来る。顔にジャンバーを被せられ、
他には一糸まとわぬ姿で脇目もふれずに僕に向かって来る。
僕がここにいる事が分るんだ。
全裸に目立つ、無くなった左腕の肩先に作られた傷口が気になった。
昨日、触ろうとしたが触らなくて良かったのかもしれない。
今、彼女は口で噛み付こうとしているけれど、
口が使えないのかも知れないと悟るなんて事がもしあったら
その肩の傷は彼女の新しい口となって僕に襲いかかるのだろうか。
警戒するに越した事はないと感じながら
僕は彼女が再びベッドへよじ登るのを待った。
(続く)
→第18章へ。
[portrait of the dead]
消防車の中から辺りを見回す消防士達…
只ならぬ張り詰めた緊張感が伝わってくる。
消防車から降りられず車内に閉じ込められた僕は
状況も飲み込めず、目の前にあるのに辿り付けない僕の家の玄関を
おあずけされた犬の様な心境で眺めていた。
死の臭い?さっきのが?
一瞬嗅いだその臭いは僕にはカビ臭い刺激臭としか感じなかったけれど
三人の消防士はその中に紛れた死の臭いを経験より得た情報から
嗅ぎ取ったのかも知れない。僕は自分の記憶に刻まれた似た臭いを
手繰ると真っ先に思い浮かんだのは土を掘り返した時の匂いだった。
死の臭いとはほど遠い気がする。さらに手繰る。
死の臭い…人の臭い…死んだ肉の臭い…
あれは?何年か前に偶然見つけた、洋服箪笥にしまってあった
手のひらに乗るほどの桐の小箱の中に入っていた、
干からびた僕の臍の尾から出ていた臭い…それはどうだ?
…一番近いのはこれだろうか?確かそれもカビ臭かった印象だったけれど
ここまで強烈な臭いではなかった気がする…。
「これまでに見たことのないような強烈なやつがどこかにいる…」
消防士がそう呟く。自分の家の玄関を観ていた僕は
隣の五十嵐さんの家の垣根がワサワサと揺れたのに気が付いた。
「あ、あそこ、なにか動きました…」 指で示した先は
さっき僕が家の裏側へ抜けた時に通った延び放題の垣根の枝の辺りだ。
揺れる垣根は徐々にこちらへと移動してくる。
その速度から間違いなくやつらだと思えた。そんな所に…
さっき通った時、実はかなりやばかったのか?…危ない。
揺れる垣根は僕達の乗った消防車の止まっている道に面した垣根で
止まった。垣根が徐々に分けられると、ゆっくりとそいつは現れた。
まるでミイラの様な干からびた顔…
かつて目が在ったであろうそのくぼみからは
ミミズが何匹も蠢き、開かれた口からは蛆みたいな幼虫や
ダンゴムシにムカデ、マイマイカブリに、
見た事もない様な黒く楕円形で蛇腹状の虫までボロボロ落ち始める。
まるで体が虫で出来ているかと思わせるくらいの姿に背筋が
凍りついた…。目の前にあるのは間違いなく、死だ…猛烈に、驚異的に。
これが生物としての自然に還ると言った本来の死の姿だとするなら
本来の死を拒み、灰と煙になろうとする僕等に、その存在を
見せつけて来る様にも思えた。
僕等は死して更に自然を拒絶している事に気が付く。
しかしそんな姿で何故動けるのだろう。…不可解極まりない。
脳ミソなんて虫に喰われて無くなっているだろうし…
だとしたら狂暴な存在には間違いない?
近づかない方が身の為だ…。
ちょっと待てよ?…
まさか、騒がしい夜に帰宅するんじゃ…?
「こんなやつ初めて見る…」「あぁ…。」
消防士のその言葉に僕の思考は途切れた。
消防士達も初めて見るその姿に全員がまた絶句した。
垣根から抜け出て消防車にゆっくり近づいて来るそいつに見入る。
つなぎの様な作業着姿で胸にはバッジが付けられていた。バッジに
刻まれた名前を目を凝らしてみると、“五十嵐”と記されていた。
「い…五十嵐さんだ!!、隣の人です。
最近見かけなかったけど… まさかこんな…」
「そうか…この様子じゃあ、殺されて埋められてたようだな…」
確かにつなぎには刃物で刺されたような裂け目と
黒ずんだ血がしみ込んだ様な跡が確認出来る。その脇で
もう一度垣根が揺れた。目を向けると再び分けられた垣根から
現れたのはもう一体のやつら…汚れて判りにくいが黄色地に白い花柄の
あしらわれたワンピースを着て、長い黒髪の、同じくミイラのような
姿をした…たぶん五十嵐さんの奥さんだろう。
胸の辺りにはご主人と同じよう刺し傷が数カ所、血の滲んだ跡。
二人してこんな姿に…一体何があったんだろうか。
死んでしまった五十嵐さん夫婦は消防車まで辿り着くと
4本の腕を延ばし窓ガラスに滑らせて来た。
こんな、口が虫達で塞がれている状態でも僕らを喰らおうとしている…。
喰われた僕らの肉は一体どこへ収まると言うんだ…。
「少年、家に帰るのは後だ。こいつらを一端まかなければ危険だ。
彼女には心細いだろうがまだ待っててもらうしかない…いいな。」
「あ、はい…わかりました。」
消防士達が危険から守ってくれようとしているのに、
家で待つのは実は危険な存在の彼女だと言うことに、
なにか後ろめたい感覚があったが、消防士達に彼女と言われる度に
照れくさい感情も起きていた。嫌な気はしない…。むしろ嬉しさに近い。
消防車はゆっくりとバックし始めるとやつらとなった五十嵐さん夫婦も
ゆっくりと消防車に付いて来た。10メートル程バックのままさがると
消防車は十字路に辿り着き、方向を変え前進し、さっき渡った橋を
渡りきった所で停車した。後方に五十嵐さん夫婦がついて来ているのを
見る。周りの道路を見渡すと他のやつらの姿はまだ見当たらない。
橋の渡された川の中に目を向けると、さっき土手にいた時に
僕に近づいて来た3体のやつらがまだ川の中にいて、
消防車に気が付いたのか15m程先から歩いて来るのが見えた。
この橋を渡りきり脇から延びるサイクリング道路を進めば僕の家の裏手に
辿り着くんだ…。そう思うと気が焦った。
「僕、ここからサイクリング道路を走って帰ります。」
「本気か?確かに裏道からなら帰れそうだが…彼女が心配なのか?」
「は、はい…早く…戻ってあげないと…」
「そうか、じゃあここまでだ…」「はい。有り難う御座居ました。」
「友達はこれから確認しに行く。」「お願いします。」
消防車は渡りきった橋をバックして渡ってくれた。
背後から近づいていた五十嵐さん夫婦は10m程先だ。行ける。
「じゃあ、行きます。」消防士達に別れを告げる。
「気を付けろ。生き延びろよ。」「はい…。」
僕は消防車を降りると目の前から延びているサイクリング道路を
見渡した。サイクリング道路上には誰もいない。
500m先には僕の家だ。消防車は僕を気遣ってやつらの気を引く為に
鐘を鳴らし始め移動を開始した。深々とお辞儀をして心の中で
礼を言うと、僕は走り出し一気に家路を急いだ。
自分の家の裏側に辿り着いた僕は、家とサイクリング道路を隔てている
フェンスをよじ登り、家の裏側の敷地内から今朝とは逆順路で
玄関をめざした。家の脇に入り五十嵐さん宅から延びた垣根の枝を
くぐりながら進むと、さっき嗅いだ死の臭いと言われたものと同じ
異臭が漂って来た。…まさか、五十嵐さん夫婦がもう戻って!?
足を止め、垣根の隙間から五十嵐さん宅の敷地内を恐る恐る覗き
様子を探る。目先には五十嵐さん宅の縁側の様な場所が見え、
裏庭の様なスペースがあって物干し台が立てられていた。
その裏庭の地面には掘り返した様な後。
そうか、ここに五十嵐さん夫婦が埋められていたんだ。
全く気が付かなかった…そんな惨劇…。そして蘇り這い出て来た…。
死の臭いには土を掘り返した時のような臭いも混ざっていた。
このせいかもしれない。僕がこの家の脇を通った時にも
ずっと土の中でもがきここから這い出ようとしていたのだろう…。
見た所、裏庭には五十嵐さん夫婦の姿も他のやつらも見当たらない。
一安心し、僕は再び家の脇を進むと目の前の通りがはっきりと見えた所で
家の壁に背をはわせ、家の脇から玄関に面した通りの様子を探ろうと
少し顔を出す。大丈夫、何もいない。僕は鍵をポケットから用意し、
その場所から手を伸ばして届く距離にあった玄関の扉のノブに
鍵を差し込んで開けると、扉をゆっくりと音を立てない様に開け、
入れる程のスペースが出来ると扉の中へ飛び込んで
また音がしないようにドアを閉め鍵を掛けた。
「ふぅ〜…」
家に入った。玄関の扉に背を着けたまま、
安堵のため息を吐くとそのまましゃがみ込む。
気が抜けたのか体が急に痛みを訴え出す。
筋肉痛を忘れていた。休ませないと、酷い事になりそうだ…。
今日はもう大人しくしていた方が良いのかもしれない。
痛む体を奮い起こし、スニーカーを脱いでリビングに向かう。
家の中は明りを点けていないので薄暗かったけれど
リビングに入るとソファーが確認出来たので
そのまま倒れ込むようにして座った。
……………?
今、僕の座っているソファーに、なにかおかしいと気付いた。
のり巻きの彼女を閉じ込めた寝室、ドアを閉め、
ソファーをその前にピタリと着け、置いた。
寝室のドアは僕の背後。
閉めた筈のドア…開いている。
ソファーはわずかに斜め。
………!!!
慌ててソファーから飛び上がった。
ソファーをずらし、開いている寝室の扉を全開に開けると
寝室へ入らずに中を見た。この位置からでも充分薄明かりの中に
ベッドと壁に挟まれたのり巻きから出た彼女の足が見える
…筈だった。
ない。彼女の足が見えない。
ベッドと壁に挟まれたのり巻きには彼女が巻かれていない。
抜け出たんだ…。僕は寝室の扉から手を延ばし
室内の明かりのスイッチを入れる。寝室へ注意深く入り、
部屋の中を確認するが彼女の姿が無い。
どこだ?彼女は?何故いない?
家を出る前に覗いた時には、彼女はのり巻きのままベッドと壁の間に
挟まれた状態で足先をもぞもぞさせていたんだ…考えるに、
ベッドと壁に挟まれたのり巻き状態の布団はうまい具合に
動かないように固定され、彼女がゆっくりと這い出るには絶妙の
嵌り具合だったのだろう。まずい…そこまで気が回らなかった…!!
彼女は今、家の中を徘徊している…どこかに。
Tシャツの猿ぐつわは喉元にずれたままで…。
僕は寝室から出ると扉を閉め、再びリビングから周りを注意深く
見渡した。彼女はどこにいる?2階?それとも父親の書斎?
父親の書斎からは点けっぱなしのパソコンの光が
開けっ放しのドアから漏れていた。
その光が何かで一瞬遮られ影が揺れる。
彼女はここだ!!…間違いない。
噛み付かれる危険を回避する為に、もう1度彼女の頭に服を
被せようと着たいたジャンバーを脱ぎ、準備をする。
僕は書斎の開いているドアに近づくと室内を覗き込んだ。
………!!!
仰天した。
全裸の彼女がそこにいた!!
死してなお艶かしいヒップラインを示した彼女の後ろ姿がそこにあった。
のり巻きから抜け出た時、身につけていた唯一の着衣だった
Yシャツも一緒に脱げてしまったようだ!!
彼女は僕に気が付いたのか、ゆっくりと体の正面をこちらに向け始めた。
すでに何度か見てしまっていても、死んでいる彼女の裸体を見るのは
彼女に意志が無い事も手伝ってか、なんとも気が引ける。
なんだこのもどかしさは…。とは言え見ない事には目測も出来ないので
しっかりと見る事にした。「ごめん…」またそんな気がして呟く。
パソコンからの明りだけでは暗くて気が付かなかったが
よく見ると父親の大事にしているデジタル一眼レフのカメラを
片方しか無い右の腕で大事そうに握り、
顔にあてレンズをこちらへ向け構えていた。
まるで写真を撮る時の様な仕草に僕は驚きと感動で
体が硬直して動けなかった。バリケードを作る時に壊さないようにと
棚から部屋の脇に移動しておいたカメラを彼女は見つけたんだ!!
パシャ。
一瞬の眩しい光とシ一ャッターの切れる音。
それが合図かのように、僕に気が付いた彼女はカメラを顔から離すと
腕はカメラの重さのまま下ろされ、パソコンの置かれた机の縁にぶつかり
カメラは手から離れ落ちて椅子のクッションの上で止まった。
その動作に僕も我に帰る。カメラを忘れた彼女の腕は僕に向けて
伸ばされると、彼女が僕に向かってゆっくりと歩き出したので、
僕は身構え彼女に近づき、頭からジャンバーを被せ、
ジャンバーの両袖を彼女の口辺りに噛ませるように縛り止めると、
彼女を後ろから抱え、リビングまで引きずってソファーへと寝かした。
相変わらず彼女の右腕は物凄い力で僕の左腕を掴み離さない。
昨日付いてしまった痣からの痛みと重なり激痛に近かったが、
近づけた勢いで彼女の首に残ったTシャツ製の猿ぐつわと
その下にあるリルの首輪を外した。
…のり巻きは有効なはず。
今の所それ以外で共存する方法は見当がつかないので
再びのり巻きを実行する事にした。それならば彼女の顔と対峙出来るし、
彼女の顔を酷くゆがめる事は、もうしたくはなかった。
僕の腕を掴んでいる彼女の手を力ずくで解くと
僕一人で寝室へ入り、内側からドアを閉め鍵をかける。
ベッドと壁の間に挟まったのり巻きの残骸を抜き取ると、
縛り止めたシーツの結び目を解きベッドに敷くと、
その上に布団を掛けた。…のり巻きの準備だ。
ガチャ…ガチャ…ガチャ…
ドアノブを回し出し、開けようとしている音がし始める。
寝室からする僅かな音に気が付いたのか
部屋の外では彼女がドアの前まで辿り着いたようだ。
時折、バンッとドアを手の平で叩いた様な音も混ざる。
そう大きな音では無いが外に洩れていないといいと祈りながら、
ベッドにシーツ、毛布、布団を掛け終え、準備は整った。
よし、後は昨日やった通りにすればいい。
僕は寝室のドアを開け、急いでベッドを乗り越えると
ドアから真正面に位置する部屋の奥で息を潜めた。
彼女が部屋へ入って来る。顔にジャンバーを被せられ、
他には一糸まとわぬ姿で脇目もふれずに僕に向かって来る。
僕がここにいる事が分るんだ。
全裸に目立つ、無くなった左腕の肩先に作られた傷口が気になった。
昨日、触ろうとしたが触らなくて良かったのかもしれない。
今、彼女は口で噛み付こうとしているけれど、
口が使えないのかも知れないと悟るなんて事がもしあったら
その肩の傷は彼女の新しい口となって僕に襲いかかるのだろうか。
警戒するに越した事はないと感じながら
僕は彼女が再びベッドへよじ登るのを待った。
(続く)
→第18章へ。
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