自作ゾンビ小説の草稿投稿中。
いらっしゃいませ。
自作のゾンビ物語の草稿を投稿中です。
予定では4日間の出来事として書いて
いますが3年も経つと言うのにようやく
3日目。それでもめげずにやって来れた
のは読んでくれる方がいらっしゃるから
こそと感謝しています。今後も感想なり
コメント頂けますと非常にやる気と
励みになります。宜しければ一言でも
添えて頂けますと嬉しいです。
自作ゾンビ物語。
[portrait of the dead]
めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
プロフィール
HN:
南瓜金助 (みなみうりごんすけ)
HP:
性別:
男性
自己紹介:
別HNカボチャスキのお送りします
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
憧れの人はフック船長と芹沢博士に
スネーク・プリスキンとDr.ルーミス。
彼らに多大なる恩恵を授かりました。
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
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[portrait of the dead]
テレビで放送された動画を目にし、そしてさっきすれ違った家族の
父親からも話には聞いていたが、目の当たりにしたひと塊になった
やつらは、僕を愕然とさせてしまうには充分な迫力で、僕の歩みは踏切
に敷かれた人が渡る為のアスファルトの上で止まってしまっていた。
僕の位置から10メートルくらい先に見えたやつらの塊は、死体が積まれて
出来た山のような印象を抱かせ、その姿に所々点在する数個の顔は僕に
向けて視線を送ると、まるで膨らんだハリセンボンの針の様に生えた
何十本と言う腕という腕を僕に伸ばす。やつらの塊を挟んだ両の民家は
ギシギシと激しい音を立て、やつらが引っ掛かっている一角は重みで
今にも崩れ落ちそうだ。そして地面を踏みしだく足はムカデの様に何十本
と伸び、その挟まった体で無理矢理突き進もうと踏ん張りを次第に強めた。
やばいだろ、これは!!
そう思った途端、血まみれ肉団子の上部が雪崩の雪の様に崩れだし、ボロ
ボロと剥がれる様にやつらのバラバラの死体が地面にボトボトと落ち
始める。これ以上は進めないと判断した為だろうか、ほずれたやつらは
落ちた地面からゆっくりと這いだし、立てるものは立ち、関節だけの
ものは尺取り虫の様に、僕に向かってゆっくり移動を始めた。
その姿を見てようやく我に帰った僕は、慌てて踏切のアスファルトの上から
移動しようと線路敷地内に向かって走り出すが、何かに引っかかった様に
ガクンと体が引き止められ進めず、慌てて後ろを振り返った。
しまった!!
呆気にとられ油断し過ぎだ!!
僕の背後には1体、何処から沸いたのか背中に背負ったの彼女の上着を
掴んで離さないやつが辿りついていた。一体だけなら振り切れそうだと
僕は無理矢チカラまかせに突き進む。背後から掴みかかっていたやつは
その勢いで前のめりに倒れ込むが、握っていた彼女のブラウスの上着が
破けてしまい彼女の背中が露にされてしまった。
しかし今はそれどころじゃない!!
崩れ落ちたやつらの集団が歩き出し、唯一線路内に入れる踏切の
アスファルトを伝いゆっくりだが僕に迫って来ていた!!
線路上だ…線路敷地内に逃げれば追って来ない筈!!
足を速め急いで線路伝いに移動。踏切から20メートル程離れ、
やつらの動向を確認する為、後ろを振りかえった。よし付いて来てない。
やはりやつらは踏切のアスファルトを無理に越え、線路敷地内に入って
来たりはしなかった。これは絶対に生前に憶えている危険な行為を
犯さないとする行動から来る姿だと思えた。
いや、しかしそれも多分ここまでだとはたと気付き思いなおした。
そう、僕がいる。例えば僕の様な、今危険な行為を犯してまで行動して
いる人間がいつか死んだならば、すでにタブー視感は取り払われて
しまっている訳で、今後…いつになるかは解らないが、線路上に入れる
死んだ人間が必ず現れて来る筈。それに今はまだ見かけていないが線路で
仕事をしていた人が死んでいたなら、今現在既に線路敷地内に入って
動いている死体もどこかにいるのではないかとも思えた。いま、こうして
やつらをかわして生きていく事がいずれは自分達の居場所をも無くす。
生きる事が自ら首を絞めている状態にいつかは人類に残された場所など
無くなるのではないかと言う事に、気が付いてしまった。
生前に染み付いた記憶を条件反射の様に繰り返すやつら…
まるで人であった事を執拗に誇示しているかの様な動く死体達。
人類は完全に“生と死”二つの存在へと分けられ鬩ぎあっている。
…その真実だけは確かだった。
線路を歩きながらやつらの塊を思い出すと体が震えた。
死人血まみれ肉団子…なんて化け物だ…。
実際目の当たりにした驚異的で圧倒的な存在感…死のオブジェ。
ただでさえ厄介なやつらなのに、バラバラでも噛み付き、ひと塊に
なったり離れたり。死の主張には一体どんな目的があるのだろうか?
死の復讐?
人類を滅ぼしたい何ものかの策略?
それとも人類が進化しただけの生物?
一変したこの世界観の中で、僕ら生きている者に
生き残る術はあるのだろうか…?
やつらは今や食物連鎖の頂点に躍り出たと言っても決して過言ではない。
最早すでにやつらが何者がではなく、僕等が何者となるのか示している
だとしたら人類とはなんなんだろうか?
悪?
邪魔者?
ゴミ?
餌?
血まみれ肉団子から離れ、どのくらい経ったか解らないが、次の駅が
見え始める所まで電車とすれ違う事も無く順調に歩き進んでいた。
背中の彼女の動きも相変わらずだ。線路脇に木材が積まれている所を
見つけ腰をおろし一息つく。
次の駅は名に大学前と付いているくらいの場所で、近くには大きな
大学があり、線路沿いの建物はスーパーにコンビニ、弁当屋に喫茶店、
レストラン、ファストフード店、宅配ピザ屋、さらには薬屋、銀行、
郵便局、本屋にレンタルビデオ店に花屋と、普段なら賑わいを見せる
店舗が連なっている。しかし殆どがシャッターを閉め、コンビニや
スーパーなどは略奪があったのかガラス窓が割られ、そこから見える
中の様子は明かりも付いておらず真っ暗で、人影があったとしても
徘徊するやつら数体のみ。民家はそう言った店舗の裏手から軒並み
建ち並んではいるが、静まり返っていて生気も感じないくらいだった。
僕はズボンのポケットから携帯電話を取り出すと昨日写メで撮った
彼女の家までの地図を確認した。駅の東口を出て目の前にまっすぐ
伸びる道があり、そこをひたすら進めば彼女の家のある番地に着く。
そこまで来れば後は表札を確認して到着と言う算段。出発から計画通りに
はいっていない事に気が付き笑みがこぼれた。彼女の服はボロボロだし、
春先とは言えこの大移動に当然僕は汗をかき体中はベトベトだ。彼女を
僕に括り着けているロープは到着まで解けない様にきつく縛ってあるので
彼女を着替えさせる事も出来ない。彼女のご両親に会うというのに酷い
格好を見せてしまうのかと若干気が滅入るが仕方ない。
もう進むしか無い。
気を取り直し歩き始めると目の前に踏切が近づいている事が判った。
もう駅まで進む事は無い。踏切から右に出て線路脇の道をまっすぐ
行けば東口にあたる。駅構内プラットホーム上にやつらがいないと
言う保証は無い。このまま素直に道路に出て進んだ方が善いと判断し
線路敷地内から出る決心をした。
踏切には3体やつらが渡っているのが確認出来る。
大学が近くにあるせいかそれぞれ若者の雰囲気。僕はゆっくり慎重に
踏切に近づくと、気が付くものも現れ、となるとどういう訳だか周囲に
いたやつらも気が付きだし踏切に集まって来ていた。踏切上で集団に
なられては動きようが無くなると思い、やつらの隙間を見計らって躱し
ながら切り抜け踏切を後にした。線路脇に走る道路に出るとやつらの姿は
当然の様にぽつんぽつんと点在していて、こうなるとここからは歩いて
進んでもいられない。とは言え、数が多いという訳でもないので小走りで
間をすり抜けながら進む。駅が左手に見え発券機と改札が見えればもう
目的の東口。その東口からみて正面にまっすぐ伸びている道があり
その道をひたすら直進すれば彼女の家のある番地に辿り着く。
もうすぐ彼女の家に着く!!
東口前、T字路を見つけると僕は意気揚々と右に曲がった。
…ちょっと待ってくれ!! 聞いてないよ!!
目を疑った。
僕の前には傾斜のきつい上り坂がそびえ立っていた。
地図をちょっと見ただけでは全く気が付かなかったが、あぁ…急坂だ。
僕に気が付いて後を追って来るやつらが周囲に集まって来ている。
やばい。仕方ない。急坂を登る。
坂の両端は民家が軒を揃えていて、前方交差する十字路へと連なる。
早歩きで登ろうと試すがすぐ勢いが無くなる。彼女を背負いながら登る
のはなかなかきつい。歩きだす。しかも歩幅は狭く。これじゃあやつらと
速度がそう変わらない。背後からはやつらが5.6体追って来ていた。
その距離、着かず離れず。
…相当きついぞ。
なんだってこんな急な坂の場所に住んでいるんだよ。
送る身にもなってくれよ。
…いや戯言だ。弱音を吐いている場面でもない。
兎に角、客実に一歩一歩進まなければならない。
やつらと徒歩で競い合う。
…そんな事態が来るなんて想像もしていなかった。
息もすぐにあがった。歩みがさらに遅くなる。後ろを振り返る。
5、6体いた後方のやつらも次第に数を増やし10体くらいになっていた。
なんだよ、やつらが息切れなんかするワケないじゃないか!!
その通り。その歩みに全くひるみは無い。…当たり前か。
やつらとの距離が縮んで来る。
くそ〜っ!! これは、悔しい!!
やつらののろのろと歩む姿勢がこんなにも恐ろしく感じた事はない!!
前方10メートル先に坂を下って来るやつが一体現れた。
何処から沸いて出て来たんだよ…交差道路?民家?
これじゃあ挟み撃ちだ。前方両脇はしばらくは民家が続いている。
眺める坂の両側は…ブロック塀、鉄柵、避ける道無し。
こうなったら前方から来るやつをなんとか躱さなければならない。
この歩いている様な速度で躱しきれるのか? いくら早く登ろうとしても
彼女を背負い息があがる僕の速度に、あまり大差は出ない。
前のやつとの距離8メートル。
そいつの姿がハッキリして来た。頭の横にもうひとつ頭が見えた。
背後から被い被さっているようだ。形的には僕と同じだが見た所
後ろのやつの足が見えない。腰から下が無い様に感じる。
僕に向けて伸ばされた4本の手…6本の四肢は観た感じまるで昆虫の様。
僕はかろうじて左へ右へと、位置を移動させながら歩き様子を伺う。
鏡に映った姿の様に前方のやつも僕と同じ動きをする。
隙がない!!… まったく動作が被る。
その距離6メートル。
目の前にいるそいつの後ろに長い紐の様なものがぶら下がっているのが
見えた。多分腸だ。後ろにくっ付いているもう一体から垂れ下がって
いるに違いない。僕を狙い、僕の動きに合わせて左右に動いていた
せいか、そいつの降りて来る速度が一歩一歩と次第に早まって来た。
坂を下っているからだ。勢いがついて来てしまったらしい。
まずい、近づかれる時間も早まって来る。
距離4メートル。
僕はなんとかして隙を作ろうと左右に移動しフェイントをかけた。
僕に気を取られたそいつの視線が一瞬戸惑ったように見え、
次の瞬間、そいつは自らの足を縺れさせた。
大胆に、まるでスローモーションの様に、前のめりに、そいつが転んだ。
そいつは坂を転がり始めた…僕は避けて躱し、そいつをやり過ごした。
背中に見えたもう1体のやつはどうやら腰あたりでくっ付いている様。
大雑把なでんぐり返りを繰り返し、垂れていた腸を振り乱して坂を下って
いくそいつら。長い腸がぶつかりそうになり、身を反らしてかわす僕。
視線をそいつらの先に移すと僕を追って来たやつらが見える。
その数10体と集まっていたやつらに向かって、転がり続けるそいつら。
ゴロゴロゴロゴロ、カーン!!
ストライク!!!
まるでボーリングの球が並んだピンを弾き飛ばすかの様に、
見事に全員をなぎ倒してくれた。
た…助かった。
絶体絶命のピンチだったよ今。
そいつらにぶつかられバランスを失ったやつらもまとめて転がり出して
いった。…そう言えば事件1日目だったか、隣りの家に上がり込んだ
やつが2階の屋根に出ては転げ落ちて行く姿があった…。
そうか、坂に弱いんだな、単純にやつらは。
そうだ、隣りのお兄さん…無事に逃げ延びられているといいけれど。
…いや、良かった。
少しの間はやつらに追いつかれずに済みそうだ。
あとは前方から沸いて来るやつに注意しながら進めばいい。
坂はまだ続く。彼女の家、一体どの位置にあるんだろうか?
まだかな…頂上は…。
電柱を見つけ番地を確認する。
彼女の住所と数字が近い。彼女の自宅に近づいているのは確かだ。
前方に坂道が途切れた所が近づく。その先の空を仰ぐ。
頂上がようやく見えて来た。
後ろを確認すると、やつらの姿は坂の下の方にあってかなり遠くに見え、
近寄って来る気配は無かった。
頂上にたどり着くと道路左側にはびっしりと煉瓦で組まれた高さ
2メートル近い壁が連なる。その内側にはどうやら洋館の様な作りの
豪邸の屋根が見えた。一体どんなお金持ちの家だろう?
こんな頑丈な壁に囲まれていれば、世間がこんな状況でも我関せずと
悠々と暮らしていけそうな気にもなりそうだ。
この先20メートルはありそうなその煉瓦の壁を伝うと刑務所にあり
そうな鉄製とおぼしき門が現れた。煉瓦の壁に表札を見る。
表札も鉄板で出来た豪華なプレートで、浮き彫りになっている
その文字を読んでみた。
“ARAKI”
あ…あらき?
彼女の名字…荒木だ。…まさか?
表札の下に刻まれた番地を確認する。
間違いない…ここが彼女の家だった。
写メした地図には番地しかなく全く気付かなかった。
想像していなかった豪邸に度肝を抜かれた。
目的地に着き緊張が解けたのか体はヘトヘトになって来た。
へたり込みそうな足を踏ん張り、勢いをつけ表札の下に
備え付けられたインターフォンのブザーを鳴らす。
「はい、どちら様でしょうか?」
聞き覚えのある声。きっと昨日話した彼女のお兄さんだ。
「き、昨日お電話した者です。お嬢さんをお連れしました。」
「…………………」
しばらく沈黙が続く。僕は危険は無いかと周囲を見渡し確認。
やつらの姿は今の所見当たらない。
30秒くらい沈黙が続き、やっと返答が来た。
「ちょっと待ってて下さい。今、私が行きますから。」
周囲を警戒しながら待つ。
よく見ると大きな鉄製の扉の片隅には人一人通れる様な
小さなドアがあり、そのドアが開くと声がした。
「早く、中へ。」
手が見え、招かれるまま僕は門をくぐり中に入るとドアが閉められる。
足下には石畳が敷かれ大きな洋館の玄関まで続いていた。
洋館の周りは芝が綺麗に敷かれていて、さらに丸く刈り上げられた
植木達がそれを囲む。こんな豪邸お邪魔した事すら無いよ。
雰囲気に萎縮した僕は横にいる人影に気付くと視線を送る。
20歳くらいの男性が一人立っていて、呆気にとられた様な、
驚いた顔をしていた。
え?何に驚いている?
男性の視線は丁度彼女の背後に向けられていた。
後ろ?あぁ、これはまずい!!
僕の脳裏にはさっき踏切でブラウスを掴んで引き千切ったやつの姿が
浮かんで来た。さらに移動中、枝に引っ掛かり破れてもいた。
彼女に着せた服、いたる所破れてビリビリじゃないか!!
しかも彼女の背中が露になってしまっている!!
冷静に考えれば大事な娘さんの肌を露にしたままやって来るなんて
失礼にも程がある…やはりなんとかして隠すなりするべきだった。
無事に届けたかったのに…ああっ…なんて失態だ。
僕の頭の中は到着したよろこびより、彼女に対しての非礼を
詫びたくて一杯だった。
突然彼女の重さに耐えられなくなり足が震え始め、
僕はその場にへたり込んでしまった。
やっと到着した。
…それだけは身に沁みた。
(続く)
→第31章へ。
[portrait of the dead]
テレビで放送された動画を目にし、そしてさっきすれ違った家族の
父親からも話には聞いていたが、目の当たりにしたひと塊になった
やつらは、僕を愕然とさせてしまうには充分な迫力で、僕の歩みは踏切
に敷かれた人が渡る為のアスファルトの上で止まってしまっていた。
僕の位置から10メートルくらい先に見えたやつらの塊は、死体が積まれて
出来た山のような印象を抱かせ、その姿に所々点在する数個の顔は僕に
向けて視線を送ると、まるで膨らんだハリセンボンの針の様に生えた
何十本と言う腕という腕を僕に伸ばす。やつらの塊を挟んだ両の民家は
ギシギシと激しい音を立て、やつらが引っ掛かっている一角は重みで
今にも崩れ落ちそうだ。そして地面を踏みしだく足はムカデの様に何十本
と伸び、その挟まった体で無理矢理突き進もうと踏ん張りを次第に強めた。
やばいだろ、これは!!
そう思った途端、血まみれ肉団子の上部が雪崩の雪の様に崩れだし、ボロ
ボロと剥がれる様にやつらのバラバラの死体が地面にボトボトと落ち
始める。これ以上は進めないと判断した為だろうか、ほずれたやつらは
落ちた地面からゆっくりと這いだし、立てるものは立ち、関節だけの
ものは尺取り虫の様に、僕に向かってゆっくり移動を始めた。
その姿を見てようやく我に帰った僕は、慌てて踏切のアスファルトの上から
移動しようと線路敷地内に向かって走り出すが、何かに引っかかった様に
ガクンと体が引き止められ進めず、慌てて後ろを振り返った。
しまった!!
呆気にとられ油断し過ぎだ!!
僕の背後には1体、何処から沸いたのか背中に背負ったの彼女の上着を
掴んで離さないやつが辿りついていた。一体だけなら振り切れそうだと
僕は無理矢チカラまかせに突き進む。背後から掴みかかっていたやつは
その勢いで前のめりに倒れ込むが、握っていた彼女のブラウスの上着が
破けてしまい彼女の背中が露にされてしまった。
しかし今はそれどころじゃない!!
崩れ落ちたやつらの集団が歩き出し、唯一線路内に入れる踏切の
アスファルトを伝いゆっくりだが僕に迫って来ていた!!
線路上だ…線路敷地内に逃げれば追って来ない筈!!
足を速め急いで線路伝いに移動。踏切から20メートル程離れ、
やつらの動向を確認する為、後ろを振りかえった。よし付いて来てない。
やはりやつらは踏切のアスファルトを無理に越え、線路敷地内に入って
来たりはしなかった。これは絶対に生前に憶えている危険な行為を
犯さないとする行動から来る姿だと思えた。
いや、しかしそれも多分ここまでだとはたと気付き思いなおした。
そう、僕がいる。例えば僕の様な、今危険な行為を犯してまで行動して
いる人間がいつか死んだならば、すでにタブー視感は取り払われて
しまっている訳で、今後…いつになるかは解らないが、線路上に入れる
死んだ人間が必ず現れて来る筈。それに今はまだ見かけていないが線路で
仕事をしていた人が死んでいたなら、今現在既に線路敷地内に入って
動いている死体もどこかにいるのではないかとも思えた。いま、こうして
やつらをかわして生きていく事がいずれは自分達の居場所をも無くす。
生きる事が自ら首を絞めている状態にいつかは人類に残された場所など
無くなるのではないかと言う事に、気が付いてしまった。
生前に染み付いた記憶を条件反射の様に繰り返すやつら…
まるで人であった事を執拗に誇示しているかの様な動く死体達。
人類は完全に“生と死”二つの存在へと分けられ鬩ぎあっている。
…その真実だけは確かだった。
線路を歩きながらやつらの塊を思い出すと体が震えた。
死人血まみれ肉団子…なんて化け物だ…。
実際目の当たりにした驚異的で圧倒的な存在感…死のオブジェ。
ただでさえ厄介なやつらなのに、バラバラでも噛み付き、ひと塊に
なったり離れたり。死の主張には一体どんな目的があるのだろうか?
死の復讐?
人類を滅ぼしたい何ものかの策略?
それとも人類が進化しただけの生物?
一変したこの世界観の中で、僕ら生きている者に
生き残る術はあるのだろうか…?
やつらは今や食物連鎖の頂点に躍り出たと言っても決して過言ではない。
最早すでにやつらが何者がではなく、僕等が何者となるのか示している
だとしたら人類とはなんなんだろうか?
悪?
邪魔者?
ゴミ?
餌?
血まみれ肉団子から離れ、どのくらい経ったか解らないが、次の駅が
見え始める所まで電車とすれ違う事も無く順調に歩き進んでいた。
背中の彼女の動きも相変わらずだ。線路脇に木材が積まれている所を
見つけ腰をおろし一息つく。
次の駅は名に大学前と付いているくらいの場所で、近くには大きな
大学があり、線路沿いの建物はスーパーにコンビニ、弁当屋に喫茶店、
レストラン、ファストフード店、宅配ピザ屋、さらには薬屋、銀行、
郵便局、本屋にレンタルビデオ店に花屋と、普段なら賑わいを見せる
店舗が連なっている。しかし殆どがシャッターを閉め、コンビニや
スーパーなどは略奪があったのかガラス窓が割られ、そこから見える
中の様子は明かりも付いておらず真っ暗で、人影があったとしても
徘徊するやつら数体のみ。民家はそう言った店舗の裏手から軒並み
建ち並んではいるが、静まり返っていて生気も感じないくらいだった。
僕はズボンのポケットから携帯電話を取り出すと昨日写メで撮った
彼女の家までの地図を確認した。駅の東口を出て目の前にまっすぐ
伸びる道があり、そこをひたすら進めば彼女の家のある番地に着く。
そこまで来れば後は表札を確認して到着と言う算段。出発から計画通りに
はいっていない事に気が付き笑みがこぼれた。彼女の服はボロボロだし、
春先とは言えこの大移動に当然僕は汗をかき体中はベトベトだ。彼女を
僕に括り着けているロープは到着まで解けない様にきつく縛ってあるので
彼女を着替えさせる事も出来ない。彼女のご両親に会うというのに酷い
格好を見せてしまうのかと若干気が滅入るが仕方ない。
もう進むしか無い。
気を取り直し歩き始めると目の前に踏切が近づいている事が判った。
もう駅まで進む事は無い。踏切から右に出て線路脇の道をまっすぐ
行けば東口にあたる。駅構内プラットホーム上にやつらがいないと
言う保証は無い。このまま素直に道路に出て進んだ方が善いと判断し
線路敷地内から出る決心をした。
踏切には3体やつらが渡っているのが確認出来る。
大学が近くにあるせいかそれぞれ若者の雰囲気。僕はゆっくり慎重に
踏切に近づくと、気が付くものも現れ、となるとどういう訳だか周囲に
いたやつらも気が付きだし踏切に集まって来ていた。踏切上で集団に
なられては動きようが無くなると思い、やつらの隙間を見計らって躱し
ながら切り抜け踏切を後にした。線路脇に走る道路に出るとやつらの姿は
当然の様にぽつんぽつんと点在していて、こうなるとここからは歩いて
進んでもいられない。とは言え、数が多いという訳でもないので小走りで
間をすり抜けながら進む。駅が左手に見え発券機と改札が見えればもう
目的の東口。その東口からみて正面にまっすぐ伸びている道があり
その道をひたすら直進すれば彼女の家のある番地に辿り着く。
もうすぐ彼女の家に着く!!
東口前、T字路を見つけると僕は意気揚々と右に曲がった。
…ちょっと待ってくれ!! 聞いてないよ!!
目を疑った。
僕の前には傾斜のきつい上り坂がそびえ立っていた。
地図をちょっと見ただけでは全く気が付かなかったが、あぁ…急坂だ。
僕に気が付いて後を追って来るやつらが周囲に集まって来ている。
やばい。仕方ない。急坂を登る。
坂の両端は民家が軒を揃えていて、前方交差する十字路へと連なる。
早歩きで登ろうと試すがすぐ勢いが無くなる。彼女を背負いながら登る
のはなかなかきつい。歩きだす。しかも歩幅は狭く。これじゃあやつらと
速度がそう変わらない。背後からはやつらが5.6体追って来ていた。
その距離、着かず離れず。
…相当きついぞ。
なんだってこんな急な坂の場所に住んでいるんだよ。
送る身にもなってくれよ。
…いや戯言だ。弱音を吐いている場面でもない。
兎に角、客実に一歩一歩進まなければならない。
やつらと徒歩で競い合う。
…そんな事態が来るなんて想像もしていなかった。
息もすぐにあがった。歩みがさらに遅くなる。後ろを振り返る。
5、6体いた後方のやつらも次第に数を増やし10体くらいになっていた。
なんだよ、やつらが息切れなんかするワケないじゃないか!!
その通り。その歩みに全くひるみは無い。…当たり前か。
やつらとの距離が縮んで来る。
くそ〜っ!! これは、悔しい!!
やつらののろのろと歩む姿勢がこんなにも恐ろしく感じた事はない!!
前方10メートル先に坂を下って来るやつが一体現れた。
何処から沸いて出て来たんだよ…交差道路?民家?
これじゃあ挟み撃ちだ。前方両脇はしばらくは民家が続いている。
眺める坂の両側は…ブロック塀、鉄柵、避ける道無し。
こうなったら前方から来るやつをなんとか躱さなければならない。
この歩いている様な速度で躱しきれるのか? いくら早く登ろうとしても
彼女を背負い息があがる僕の速度に、あまり大差は出ない。
前のやつとの距離8メートル。
そいつの姿がハッキリして来た。頭の横にもうひとつ頭が見えた。
背後から被い被さっているようだ。形的には僕と同じだが見た所
後ろのやつの足が見えない。腰から下が無い様に感じる。
僕に向けて伸ばされた4本の手…6本の四肢は観た感じまるで昆虫の様。
僕はかろうじて左へ右へと、位置を移動させながら歩き様子を伺う。
鏡に映った姿の様に前方のやつも僕と同じ動きをする。
隙がない!!… まったく動作が被る。
その距離6メートル。
目の前にいるそいつの後ろに長い紐の様なものがぶら下がっているのが
見えた。多分腸だ。後ろにくっ付いているもう一体から垂れ下がって
いるに違いない。僕を狙い、僕の動きに合わせて左右に動いていた
せいか、そいつの降りて来る速度が一歩一歩と次第に早まって来た。
坂を下っているからだ。勢いがついて来てしまったらしい。
まずい、近づかれる時間も早まって来る。
距離4メートル。
僕はなんとかして隙を作ろうと左右に移動しフェイントをかけた。
僕に気を取られたそいつの視線が一瞬戸惑ったように見え、
次の瞬間、そいつは自らの足を縺れさせた。
大胆に、まるでスローモーションの様に、前のめりに、そいつが転んだ。
そいつは坂を転がり始めた…僕は避けて躱し、そいつをやり過ごした。
背中に見えたもう1体のやつはどうやら腰あたりでくっ付いている様。
大雑把なでんぐり返りを繰り返し、垂れていた腸を振り乱して坂を下って
いくそいつら。長い腸がぶつかりそうになり、身を反らしてかわす僕。
視線をそいつらの先に移すと僕を追って来たやつらが見える。
その数10体と集まっていたやつらに向かって、転がり続けるそいつら。
ゴロゴロゴロゴロ、カーン!!
ストライク!!!
まるでボーリングの球が並んだピンを弾き飛ばすかの様に、
見事に全員をなぎ倒してくれた。
た…助かった。
絶体絶命のピンチだったよ今。
そいつらにぶつかられバランスを失ったやつらもまとめて転がり出して
いった。…そう言えば事件1日目だったか、隣りの家に上がり込んだ
やつが2階の屋根に出ては転げ落ちて行く姿があった…。
そうか、坂に弱いんだな、単純にやつらは。
そうだ、隣りのお兄さん…無事に逃げ延びられているといいけれど。
…いや、良かった。
少しの間はやつらに追いつかれずに済みそうだ。
あとは前方から沸いて来るやつに注意しながら進めばいい。
坂はまだ続く。彼女の家、一体どの位置にあるんだろうか?
まだかな…頂上は…。
電柱を見つけ番地を確認する。
彼女の住所と数字が近い。彼女の自宅に近づいているのは確かだ。
前方に坂道が途切れた所が近づく。その先の空を仰ぐ。
頂上がようやく見えて来た。
後ろを確認すると、やつらの姿は坂の下の方にあってかなり遠くに見え、
近寄って来る気配は無かった。
頂上にたどり着くと道路左側にはびっしりと煉瓦で組まれた高さ
2メートル近い壁が連なる。その内側にはどうやら洋館の様な作りの
豪邸の屋根が見えた。一体どんなお金持ちの家だろう?
こんな頑丈な壁に囲まれていれば、世間がこんな状況でも我関せずと
悠々と暮らしていけそうな気にもなりそうだ。
この先20メートルはありそうなその煉瓦の壁を伝うと刑務所にあり
そうな鉄製とおぼしき門が現れた。煉瓦の壁に表札を見る。
表札も鉄板で出来た豪華なプレートで、浮き彫りになっている
その文字を読んでみた。
“ARAKI”
あ…あらき?
彼女の名字…荒木だ。…まさか?
表札の下に刻まれた番地を確認する。
間違いない…ここが彼女の家だった。
写メした地図には番地しかなく全く気付かなかった。
想像していなかった豪邸に度肝を抜かれた。
目的地に着き緊張が解けたのか体はヘトヘトになって来た。
へたり込みそうな足を踏ん張り、勢いをつけ表札の下に
備え付けられたインターフォンのブザーを鳴らす。
「はい、どちら様でしょうか?」
聞き覚えのある声。きっと昨日話した彼女のお兄さんだ。
「き、昨日お電話した者です。お嬢さんをお連れしました。」
「…………………」
しばらく沈黙が続く。僕は危険は無いかと周囲を見渡し確認。
やつらの姿は今の所見当たらない。
30秒くらい沈黙が続き、やっと返答が来た。
「ちょっと待ってて下さい。今、私が行きますから。」
周囲を警戒しながら待つ。
よく見ると大きな鉄製の扉の片隅には人一人通れる様な
小さなドアがあり、そのドアが開くと声がした。
「早く、中へ。」
手が見え、招かれるまま僕は門をくぐり中に入るとドアが閉められる。
足下には石畳が敷かれ大きな洋館の玄関まで続いていた。
洋館の周りは芝が綺麗に敷かれていて、さらに丸く刈り上げられた
植木達がそれを囲む。こんな豪邸お邪魔した事すら無いよ。
雰囲気に萎縮した僕は横にいる人影に気付くと視線を送る。
20歳くらいの男性が一人立っていて、呆気にとられた様な、
驚いた顔をしていた。
え?何に驚いている?
男性の視線は丁度彼女の背後に向けられていた。
後ろ?あぁ、これはまずい!!
僕の脳裏にはさっき踏切でブラウスを掴んで引き千切ったやつの姿が
浮かんで来た。さらに移動中、枝に引っ掛かり破れてもいた。
彼女に着せた服、いたる所破れてビリビリじゃないか!!
しかも彼女の背中が露になってしまっている!!
冷静に考えれば大事な娘さんの肌を露にしたままやって来るなんて
失礼にも程がある…やはりなんとかして隠すなりするべきだった。
無事に届けたかったのに…ああっ…なんて失態だ。
僕の頭の中は到着したよろこびより、彼女に対しての非礼を
詫びたくて一杯だった。
突然彼女の重さに耐えられなくなり足が震え始め、
僕はその場にへたり込んでしまった。
やっと到着した。
…それだけは身に沁みた。
(続く)
→第31章へ。
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