自作ゾンビ小説の草稿投稿中。
いらっしゃいませ。
自作のゾンビ物語の草稿を投稿中です。
予定では4日間の出来事として書いて
いますが3年も経つと言うのにようやく
3日目。それでもめげずにやって来れた
のは読んでくれる方がいらっしゃるから
こそと感謝しています。今後も感想なり
コメント頂けますと非常にやる気と
励みになります。宜しければ一言でも
添えて頂けますと嬉しいです。
自作ゾンビ物語。
[portrait of the dead]
めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
プロフィール
HN:
南瓜金助 (みなみうりごんすけ)
HP:
性別:
男性
自己紹介:
別HNカボチャスキのお送りします
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
憧れの人はフック船長と芹沢博士に
スネーク・プリスキンとDr.ルーミス。
彼らに多大なる恩恵を授かりました。
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
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→目次ページはコチラから
[portrait of the dead]
線路敷地内を歩き進む。彼女を背負いながら。
やつらの渡っていた踏切を強硬突破したあと、しばらくは線路両脇には
繁華街のビルが立ち並ぶ風景が続く。線路脇に並走する公道には所々
血の染み付いた跡が残り、深刻な現状を物語っていた。道すがらさすがに
やつらの点在する数が多いと気付く。ガラス窓の割れたビルも見て取れ、
その壁にもやはり血の垂れた跡が付いていた。
ただでさえぎこちない動きのやつらの中に飛び抜けて動きのおかしな
やつらが2、3体目に付く。よく見ると、両の足には別人のものだったで
あろうちぎれた腕や足先がくっ付いている。テレビで観た肉片ですら
僕等を襲い喰らうと言う現象が起きた結果だろう。死が、纏わり付く。
他に、上半身と顔だけの状態のやつが肩から生えたようにくっ付いた、
まるで頭を二つ持った様な姿のやつもいる。それらは多分、生き残りを
かけ、やつらの四肢を切る等してどうにか攻防を図った結果が招いた
凄まじい姿だろう。人の多い繁華街を襲った想像を絶する程の惨劇が
繰り広げられた故に違いない。死のパレードがここでもあった。
道行くやつらの中には線路敷地内を進む僕に気が付きしばらく並んで歩く
ものもいるが、何故か柵や塀を登ってまで追っ手は来ない。どうやら
本当に線路敷地内には入って来ないらしい。ルールをまもる死体とルール
をまもらない生者になんだか矛盾を感じ、少し頬が緩む。道が途切れれば
やつらは追うのをやめてくれた。これは好都合だった。彼女の実家近くの
最寄り駅までは約30分くらいだろうか…それまではこの線路敷地内を
休み休みひたすら進む事にした。
線路は繁華街を抜け、見れば両脇は土砂が崩れないように補強された
升目だらけのコンクリートの壁になっていた。しばらく谷間のような
場所を突き進む。
プワ〜ン!!
後方から電車の警告音が響き驚く。慌てて振り返ると100メートル程斜め
後方にゆっくりと進行する電車を確認。僕は立ち止まって電車をやり
過ごすと電車の運転手と目が合い相手は手を挙げ挨拶をしてくれた。
ホッとした。こんな異常事態に人との接触が安心感を醸し出す。運転して
いた人は制服を着ていなかった事から、もしかするとたまたま運転技術を
持った人が運行しているのかも知れない。それでもこの機動力は大勢が
拠り所にしている事だろう。行き過る列車内を覗き込むと僕の位置からは
窓際に立って外を見ていた一人しか確認出来なかったけれど、それでも
確かに人は生存していてこの事態をどうにかやりくりしているらしい。
僕の横を通っていった列車を遠くに眺めていると最後尾の車両の過ぎた
脇から見えた人影数体に気付く。
…やつらか?
僕は歩みを止め目を凝らし警戒すると、遠くから手を振っている姿が
確認出来、僕はそのまま進む事にした。背負った彼女の事、聞かれたら
なんて言おう…とりあえず僕の方に近づいて来たらあまり近づかない
ようにと警戒を促そう。
僕と反対方向に進む人達は観た感じ一家の様だ。父、母、長女、そして
息子の4人。お互いの距離が7、8メートル程まで近づくと父親らしき
男が声をかけて来た。
「このまま線路伝いに進むのか?」
40代前半だろうか。ワイシャツにスラックス姿。会社に出社していて事態
を知り、慌てて家族の元へ帰り皆そろって避難した…そんな感じだ。
「はい。次の次の駅まで行きたいので…」
「そうか。なら気を付けた方がいい。次の駅は大変な事になっているから」
一体何が起きているんだろう?
「大変な事って…?」
「駅のホームだ。100を越える数はいただろうか…何故かは解らないが
まるで電車を待っているかのようにたむろして並んでいるんだ。
私たちは思い切って2車線の線路の中央、ふたつのホームに挟まれた
真ん中を、やつらを刺激しないように慎重に通り抜けたんだが、その間
何体か押されてか、線路敷地内に落ちて来てあせったよ。驚いてそのまま
後ろを見ずに皆で走って駅を抜けたんだが…落ちたやつらがその後どう
なったかは解らんが、きっと今通過していった電車に轢かれているかも
知れない。」
それは確かに危険だ…
バラバラになったやつらでも僕達人間を襲いに来る事は判っている。
「あ、ありがとうございます。それはかなり危険ですね。」
「ああ…」
話ながら歩み寄って来た父親らしき男との距離が
僕から3メートル程になっていた。
「その…背中のは…まさか化け物?」
バレたのに焦り僕は注意を促す。
「それ以上、近づかないで…恋人なんです。死んでいますが化け物では
ありません…彼女の両親に送り届ける約束をしたので、連れて行く
途中なんです。」
父親らしき男は自分の口にした言葉に気まずそうな顔。
「すまない…化け物とは言い過ぎた。勇敢だな、こんな事態に。
私も家族の者がそうなったら、きっと庇うだろう。健闘を祈るよ。」
「パパ…早くお爺ちゃん家に行こうよ。日が暮れちゃうよ。」
中学生くらいか…長女らしき娘さんが反対車線の脇から声をかけて来た。
「すぐ追いつくから先に歩いていなさい。電車には気をつけて。」
「うん、早くね。じゃあ先歩いてるから…」
娘さんがそう言うと母親と小学生くらいの息子と三人で
ゆっくりと僕の進行方向とは逆の方へ歩き出始めた。
「伝えておいた方がいい事が…少し時間くれるかな?」
「はい。大丈夫です。情報はありがたいので…」
「人に気を付けろ。」
「ひ、人…ですか?」
この異常事態だ…暴徒と化した人々が略奪か危険な行為をしている
のだろうかと想像はしたが、その男性の口から出た話は全く違っていた。
「私たちはこの先の小学校にある体育館に避難していたんだ。
そこから逃げて来た。避難中の体育館は中からパイプ椅子やマットで
バリケードが作られやつらの侵入を阻止していてた。体育館の脇は校庭で
学校敷地内は3メートル程の高さの柵に囲まれてはいたものの校門を
締める事が出来無かった為にやつらが徐々に集まり、避難所にいる私達を
狙ってかその数は1000を越えるような状態になっていて危険には違い
なかったがそれでも避難所としてはひとまず機能していたんだ。」
やはり避難所にいても全く危機を回避できるわけでは無いんだ…
突然死した人がひっそりと襲って来たと河井も言っていた…
父親は少し表情を険しくし話を続ける。
「…そこへ武装した男が二人、
昨日の昼くらいだったか…体育館にやって来たんだ。」
「武装した二人?」
僕は先の内容に全く見当がつかず、そう口走った。
「1人はチェーンソーを持ち、もう1人は草を刈る為の丸ノコの様なもの
を抱えていた。二人とも体には数本のナイフや手斧が装備されていて、
実際頼もしくも見えたし見た感じも至って普通だった。好青年と言え
そうな。とても悪さをする様な連中には見えず、校門から堂々と入って
来た姿に救世主が来たって騒ぐものもいた程だ。」
「彼らは学校の門に入るやいなや、持っていた二つの道具を駆使し
1000体近くいたやつらを見る見るうちにバラバラにし辺りは血の
海になっていった…」
話の途中だったがあまりにも驚いてしまい話を遮ってしまう。
「ち…ちょっと、待って下さい。それって物凄く危ないじゃないですか!!
バラバラになった方が、やつら…むしろ危険…」
「君、知っているのか?やつらひと塊になるって…」
「はい、昨日動画を観て知りました。」
「そうか…私達はその日まで知らなくて…避難所にはラジオがあった
んだが、バラバラ死体が固まるなんて話までは届いていなくて…」
父親は話を続けた。
「一体残らずやつらをバラバラにした武装した二人はいつの間にかいなく
なっていた。血の海でバラバラになったやつらを見て、もう安全だと…
校門を閉めにいった男がいたんだ。バリケードをどかし外に出てやつらの
残骸を踏まないように歩いていった。しかし門まであと半分くらい進んだ
所で血の海に足をすくわれ転んだ拍子にやつらの残骸に倒れ込んだ。
…悲鳴が聞こえたよ。その男の体中にはバラバラになったやつらがまるで
ピラニアが群れで餌に喰らい付くようにようにへばりつきゆっくりと
大きな塊を作っていったんだ…その塊は高さ10メートルに及び徐々に
我々の避難している体育館に近づいて来ていた。この先何が起きるか全く
見当が付かず、私達は体育館の中に留まって様子を伺う事にしたんだ。」
僕自身も何が起きたのか全く見当が付かない。
僕は固唾をのんで話に聞き入っていた。
「しかし今朝がた…やつらの塊はとうとう体育館の壁にぶつかるとゆっくり
とだがまるで百足が沢山の足で壁をよじ登る様に壁を伝い、体育館の壁
上部にある窓に届くとガラスを突き破り少しづつ中に侵入して来た。私達
は警戒しながらバリケードを崩し体育館の外に逃げ出す準備を始めた。
しかしどういったワケかやつらの塊はそのまま窓を抜けると上へ上へと
進んで行った。ナメクジの様に壁にへばり付きながらどんどんと上へ。
私達は何が起きているのか予想できずに状況に見入ってしまっていた。
やがて天井の中央は蜂の巣に群がる蜂達の様にバラバラ死体が犇めきあう
状態になっていた。…そこでだ…やつらが天井から少しずつ剥がれ
バラバラとほつれながら落ちて来たんだ…死体の雨が降って来たんだよ。」
僕は絶句していた。一度くっ付いたはずのやつらが
またバラバラに分裂して上から降り注いで来るなんて…
死のオブジェは誰にも止める事は出来ないのだろうか…
「やつらのバラバラの残骸は容赦なく避難していた人達に降り注ぎ食らい
付いて行き、体育館の中は一瞬にして血しぶき舞う地獄と化した。私達
一家は幸いな事に落ちて来る死体を免れる位置にいて急いでバリケードを
壊し外に逃げ出せた。1000体以上いたやつらがある程度ひと塊になった
事で私達は逃げ易くはなっていて、校舎の裏に通っていた線路を見つけ、
見通しの良い線路敷地内に逃げ延びたんだ…」
「そうだったんですか…でも、危険なのは人って…」
「そうだ。線路に入る際、柵を越えながら追っ手がいないか来た方角を
一瞬見たんだ…そうしたらいたよ、彼ら二人、校舎の屋上に。見ていた
んだパニックの一部始終を…そして気が付いたんだよ。思い出したんだ。
チェーンソーの爆音にかき消されて聞こえにくかったがあの武装した
彼らは、確かに笑いながらやつらを切り刻んでいたって…。彼らは死を
弄んで楽しんでいると。生きている者の死をもだ…。随分と慣れた様子
だったから、ああいった行為を繰り返し、バラバラになった死体がその
あとどうなるかも知っていたんだ。救世主なんかじゃなかった…だが
悪魔でも無い…あれも人間だ。だからよけい気を付けて欲しいんだ。
こういった世にああいった連中は全ての死を支配した気でいるのかも
知れない。世界を操っている気で…」
「…危険ですね。生も死も関係ないなんて…気を付けた方がよいですね。」
「君の進む先には彼らの様な連中がいる事を憶えておいてくれ。
今、君のしている行為は死を弄ぶ連中とは真逆だ…きっと目障りだろう。
…出会わなければいいが、注意はしておいた方がいい。」
父親は家族の進んでいった方向に視線を送り、手を降った。
僕も振り返って後ろを確認すると、100メートルは先の場所で
家族がこちらを向いて立ち止まっていて手を振っているのが見えた。
「…引き止めてすまなかった。じゃあ、私は家族の元に向かうから。」
僕も礼を言う。
「いえ、お話聞けて良かったです。」
父親は話を終えると家族に追いつこうと小走りに進んでいった。
僕は少し声を張り話しかける。
「その先に、踏切があります。やつら結構渡っていますから気を付けて
下さい。それと踏切の先の駅にはたぶん駅員さんがいます。ホームは
無人だったから少し休ませてもらえるといいですね。」
「ああ、そうか。ありがとう。君も気を付けて。
無事に辿りつける事を祈っているよ。…さようなら。」
「…さようなら!!」
僕も手を振り別れの挨拶を交わす。
人との会話に少し気持ちが癒された。体も休めたし。
家族か…僕にはもう無くなってしまった環境。
自分の父さんと母さんの事を思い出し少し感傷的になったけれど
気を取り直し先に進もうと足を動かし始めた。
彼女は相変わらず背中からヘルメット越しに僕の首を狙っている。
出掛ける時、ほぼ真上にあった太陽が傾き始めている。
陽の沈む方角には山が見え、その後ろから雲がせり出して来ていた。
夜には雨にでもなるのだろうか…急いだ方が良さそうだと
足取りを速めながら、さっき話していた会話を思い出していた。
気をつけなければいけないのは、人の方。
…そんな事考えてもみなかった。
(続く)
→第29章へ。
[portrait of the dead]
線路敷地内を歩き進む。彼女を背負いながら。
やつらの渡っていた踏切を強硬突破したあと、しばらくは線路両脇には
繁華街のビルが立ち並ぶ風景が続く。線路脇に並走する公道には所々
血の染み付いた跡が残り、深刻な現状を物語っていた。道すがらさすがに
やつらの点在する数が多いと気付く。ガラス窓の割れたビルも見て取れ、
その壁にもやはり血の垂れた跡が付いていた。
ただでさえぎこちない動きのやつらの中に飛び抜けて動きのおかしな
やつらが2、3体目に付く。よく見ると、両の足には別人のものだったで
あろうちぎれた腕や足先がくっ付いている。テレビで観た肉片ですら
僕等を襲い喰らうと言う現象が起きた結果だろう。死が、纏わり付く。
他に、上半身と顔だけの状態のやつが肩から生えたようにくっ付いた、
まるで頭を二つ持った様な姿のやつもいる。それらは多分、生き残りを
かけ、やつらの四肢を切る等してどうにか攻防を図った結果が招いた
凄まじい姿だろう。人の多い繁華街を襲った想像を絶する程の惨劇が
繰り広げられた故に違いない。死のパレードがここでもあった。
道行くやつらの中には線路敷地内を進む僕に気が付きしばらく並んで歩く
ものもいるが、何故か柵や塀を登ってまで追っ手は来ない。どうやら
本当に線路敷地内には入って来ないらしい。ルールをまもる死体とルール
をまもらない生者になんだか矛盾を感じ、少し頬が緩む。道が途切れれば
やつらは追うのをやめてくれた。これは好都合だった。彼女の実家近くの
最寄り駅までは約30分くらいだろうか…それまではこの線路敷地内を
休み休みひたすら進む事にした。
線路は繁華街を抜け、見れば両脇は土砂が崩れないように補強された
升目だらけのコンクリートの壁になっていた。しばらく谷間のような
場所を突き進む。
プワ〜ン!!
後方から電車の警告音が響き驚く。慌てて振り返ると100メートル程斜め
後方にゆっくりと進行する電車を確認。僕は立ち止まって電車をやり
過ごすと電車の運転手と目が合い相手は手を挙げ挨拶をしてくれた。
ホッとした。こんな異常事態に人との接触が安心感を醸し出す。運転して
いた人は制服を着ていなかった事から、もしかするとたまたま運転技術を
持った人が運行しているのかも知れない。それでもこの機動力は大勢が
拠り所にしている事だろう。行き過る列車内を覗き込むと僕の位置からは
窓際に立って外を見ていた一人しか確認出来なかったけれど、それでも
確かに人は生存していてこの事態をどうにかやりくりしているらしい。
僕の横を通っていった列車を遠くに眺めていると最後尾の車両の過ぎた
脇から見えた人影数体に気付く。
…やつらか?
僕は歩みを止め目を凝らし警戒すると、遠くから手を振っている姿が
確認出来、僕はそのまま進む事にした。背負った彼女の事、聞かれたら
なんて言おう…とりあえず僕の方に近づいて来たらあまり近づかない
ようにと警戒を促そう。
僕と反対方向に進む人達は観た感じ一家の様だ。父、母、長女、そして
息子の4人。お互いの距離が7、8メートル程まで近づくと父親らしき
男が声をかけて来た。
「このまま線路伝いに進むのか?」
40代前半だろうか。ワイシャツにスラックス姿。会社に出社していて事態
を知り、慌てて家族の元へ帰り皆そろって避難した…そんな感じだ。
「はい。次の次の駅まで行きたいので…」
「そうか。なら気を付けた方がいい。次の駅は大変な事になっているから」
一体何が起きているんだろう?
「大変な事って…?」
「駅のホームだ。100を越える数はいただろうか…何故かは解らないが
まるで電車を待っているかのようにたむろして並んでいるんだ。
私たちは思い切って2車線の線路の中央、ふたつのホームに挟まれた
真ん中を、やつらを刺激しないように慎重に通り抜けたんだが、その間
何体か押されてか、線路敷地内に落ちて来てあせったよ。驚いてそのまま
後ろを見ずに皆で走って駅を抜けたんだが…落ちたやつらがその後どう
なったかは解らんが、きっと今通過していった電車に轢かれているかも
知れない。」
それは確かに危険だ…
バラバラになったやつらでも僕達人間を襲いに来る事は判っている。
「あ、ありがとうございます。それはかなり危険ですね。」
「ああ…」
話ながら歩み寄って来た父親らしき男との距離が
僕から3メートル程になっていた。
「その…背中のは…まさか化け物?」
バレたのに焦り僕は注意を促す。
「それ以上、近づかないで…恋人なんです。死んでいますが化け物では
ありません…彼女の両親に送り届ける約束をしたので、連れて行く
途中なんです。」
父親らしき男は自分の口にした言葉に気まずそうな顔。
「すまない…化け物とは言い過ぎた。勇敢だな、こんな事態に。
私も家族の者がそうなったら、きっと庇うだろう。健闘を祈るよ。」
「パパ…早くお爺ちゃん家に行こうよ。日が暮れちゃうよ。」
中学生くらいか…長女らしき娘さんが反対車線の脇から声をかけて来た。
「すぐ追いつくから先に歩いていなさい。電車には気をつけて。」
「うん、早くね。じゃあ先歩いてるから…」
娘さんがそう言うと母親と小学生くらいの息子と三人で
ゆっくりと僕の進行方向とは逆の方へ歩き出始めた。
「伝えておいた方がいい事が…少し時間くれるかな?」
「はい。大丈夫です。情報はありがたいので…」
「人に気を付けろ。」
「ひ、人…ですか?」
この異常事態だ…暴徒と化した人々が略奪か危険な行為をしている
のだろうかと想像はしたが、その男性の口から出た話は全く違っていた。
「私たちはこの先の小学校にある体育館に避難していたんだ。
そこから逃げて来た。避難中の体育館は中からパイプ椅子やマットで
バリケードが作られやつらの侵入を阻止していてた。体育館の脇は校庭で
学校敷地内は3メートル程の高さの柵に囲まれてはいたものの校門を
締める事が出来無かった為にやつらが徐々に集まり、避難所にいる私達を
狙ってかその数は1000を越えるような状態になっていて危険には違い
なかったがそれでも避難所としてはひとまず機能していたんだ。」
やはり避難所にいても全く危機を回避できるわけでは無いんだ…
突然死した人がひっそりと襲って来たと河井も言っていた…
父親は少し表情を険しくし話を続ける。
「…そこへ武装した男が二人、
昨日の昼くらいだったか…体育館にやって来たんだ。」
「武装した二人?」
僕は先の内容に全く見当がつかず、そう口走った。
「1人はチェーンソーを持ち、もう1人は草を刈る為の丸ノコの様なもの
を抱えていた。二人とも体には数本のナイフや手斧が装備されていて、
実際頼もしくも見えたし見た感じも至って普通だった。好青年と言え
そうな。とても悪さをする様な連中には見えず、校門から堂々と入って
来た姿に救世主が来たって騒ぐものもいた程だ。」
「彼らは学校の門に入るやいなや、持っていた二つの道具を駆使し
1000体近くいたやつらを見る見るうちにバラバラにし辺りは血の
海になっていった…」
話の途中だったがあまりにも驚いてしまい話を遮ってしまう。
「ち…ちょっと、待って下さい。それって物凄く危ないじゃないですか!!
バラバラになった方が、やつら…むしろ危険…」
「君、知っているのか?やつらひと塊になるって…」
「はい、昨日動画を観て知りました。」
「そうか…私達はその日まで知らなくて…避難所にはラジオがあった
んだが、バラバラ死体が固まるなんて話までは届いていなくて…」
父親は話を続けた。
「一体残らずやつらをバラバラにした武装した二人はいつの間にかいなく
なっていた。血の海でバラバラになったやつらを見て、もう安全だと…
校門を閉めにいった男がいたんだ。バリケードをどかし外に出てやつらの
残骸を踏まないように歩いていった。しかし門まであと半分くらい進んだ
所で血の海に足をすくわれ転んだ拍子にやつらの残骸に倒れ込んだ。
…悲鳴が聞こえたよ。その男の体中にはバラバラになったやつらがまるで
ピラニアが群れで餌に喰らい付くようにようにへばりつきゆっくりと
大きな塊を作っていったんだ…その塊は高さ10メートルに及び徐々に
我々の避難している体育館に近づいて来ていた。この先何が起きるか全く
見当が付かず、私達は体育館の中に留まって様子を伺う事にしたんだ。」
僕自身も何が起きたのか全く見当が付かない。
僕は固唾をのんで話に聞き入っていた。
「しかし今朝がた…やつらの塊はとうとう体育館の壁にぶつかるとゆっくり
とだがまるで百足が沢山の足で壁をよじ登る様に壁を伝い、体育館の壁
上部にある窓に届くとガラスを突き破り少しづつ中に侵入して来た。私達
は警戒しながらバリケードを崩し体育館の外に逃げ出す準備を始めた。
しかしどういったワケかやつらの塊はそのまま窓を抜けると上へ上へと
進んで行った。ナメクジの様に壁にへばり付きながらどんどんと上へ。
私達は何が起きているのか予想できずに状況に見入ってしまっていた。
やがて天井の中央は蜂の巣に群がる蜂達の様にバラバラ死体が犇めきあう
状態になっていた。…そこでだ…やつらが天井から少しずつ剥がれ
バラバラとほつれながら落ちて来たんだ…死体の雨が降って来たんだよ。」
僕は絶句していた。一度くっ付いたはずのやつらが
またバラバラに分裂して上から降り注いで来るなんて…
死のオブジェは誰にも止める事は出来ないのだろうか…
「やつらのバラバラの残骸は容赦なく避難していた人達に降り注ぎ食らい
付いて行き、体育館の中は一瞬にして血しぶき舞う地獄と化した。私達
一家は幸いな事に落ちて来る死体を免れる位置にいて急いでバリケードを
壊し外に逃げ出せた。1000体以上いたやつらがある程度ひと塊になった
事で私達は逃げ易くはなっていて、校舎の裏に通っていた線路を見つけ、
見通しの良い線路敷地内に逃げ延びたんだ…」
「そうだったんですか…でも、危険なのは人って…」
「そうだ。線路に入る際、柵を越えながら追っ手がいないか来た方角を
一瞬見たんだ…そうしたらいたよ、彼ら二人、校舎の屋上に。見ていた
んだパニックの一部始終を…そして気が付いたんだよ。思い出したんだ。
チェーンソーの爆音にかき消されて聞こえにくかったがあの武装した
彼らは、確かに笑いながらやつらを切り刻んでいたって…。彼らは死を
弄んで楽しんでいると。生きている者の死をもだ…。随分と慣れた様子
だったから、ああいった行為を繰り返し、バラバラになった死体がその
あとどうなるかも知っていたんだ。救世主なんかじゃなかった…だが
悪魔でも無い…あれも人間だ。だからよけい気を付けて欲しいんだ。
こういった世にああいった連中は全ての死を支配した気でいるのかも
知れない。世界を操っている気で…」
「…危険ですね。生も死も関係ないなんて…気を付けた方がよいですね。」
「君の進む先には彼らの様な連中がいる事を憶えておいてくれ。
今、君のしている行為は死を弄ぶ連中とは真逆だ…きっと目障りだろう。
…出会わなければいいが、注意はしておいた方がいい。」
父親は家族の進んでいった方向に視線を送り、手を降った。
僕も振り返って後ろを確認すると、100メートルは先の場所で
家族がこちらを向いて立ち止まっていて手を振っているのが見えた。
「…引き止めてすまなかった。じゃあ、私は家族の元に向かうから。」
僕も礼を言う。
「いえ、お話聞けて良かったです。」
父親は話を終えると家族に追いつこうと小走りに進んでいった。
僕は少し声を張り話しかける。
「その先に、踏切があります。やつら結構渡っていますから気を付けて
下さい。それと踏切の先の駅にはたぶん駅員さんがいます。ホームは
無人だったから少し休ませてもらえるといいですね。」
「ああ、そうか。ありがとう。君も気を付けて。
無事に辿りつける事を祈っているよ。…さようなら。」
「…さようなら!!」
僕も手を振り別れの挨拶を交わす。
人との会話に少し気持ちが癒された。体も休めたし。
家族か…僕にはもう無くなってしまった環境。
自分の父さんと母さんの事を思い出し少し感傷的になったけれど
気を取り直し先に進もうと足を動かし始めた。
彼女は相変わらず背中からヘルメット越しに僕の首を狙っている。
出掛ける時、ほぼ真上にあった太陽が傾き始めている。
陽の沈む方角には山が見え、その後ろから雲がせり出して来ていた。
夜には雨にでもなるのだろうか…急いだ方が良さそうだと
足取りを速めながら、さっき話していた会話を思い出していた。
気をつけなければいけないのは、人の方。
…そんな事考えてもみなかった。
(続く)
→第29章へ。
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