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自作ゾンビ小説の草稿投稿中。
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いらっしゃいませ。


自作のゾンビ物語の草稿を投稿中です。
予定では4日間の出来事として書いて
いますが3年も経つと言うのにようやく
3日目。それでもめげずにやって来れた
のは読んでくれる方がいらっしゃるから
こそと感謝しています。今後も感想なり
コメント頂けますと非常にやる気と
励みになります。宜しければ一言でも
添えて頂けますと嬉しいです。
自作ゾンビ物語。
[portrait of the dead]

めざせ!! ゾンビ小説家!!
ゾンビが好きすぎて自作のお話なんか
拵えております。なにぶん素人の
書く物語なので大目にみて下さい。
「ゾンビと暮らす。」(仮)→目次
スペシャル企画。
不定期更新
◆ZOMBIE vs. BABY◆


「生ける屍対赤児/目次」
「産まれて間もない新生児」と
「死して間もないゾンビ」との比較検証。
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南瓜金助 (みなみうりごんすけ)
性別:
男性
自己紹介:
別HNカボチャスキのお送りします
来た人だけが知っている秘密の部屋。
言うに洩れずホラー映画が好きです。
憧れの人はフック船長と芹沢博士に
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[portrait of the dead]





いよいよ出発だ。
彼女の自宅まで、彼女を送り届ける。

彼女には万が一僕に噛み付かないようにと手ぬぐいで作った猿ぐつわを
かませ、その上から頭にヘルメットを被せた。服装は母さんのブラウスと
スカートを着せる。彼女を背負い、落ちないようにがんじがらめに僕と
ロープで縛り付けたのだが、背負った時に股を開かせるのに気が付き、
スカートのままだと臀部が露になってしまいそうなのでスカートの下には
僕の履いていたジャージーのズボンを履かせてある。

僕は学校の制服姿にきがえ、ズボンのポケットには彼女の家までの地図を
写メした携帯電話と家の鍵、そしてがんじがらめに縛ったロープを切る為
の大きめのカッターを偲ばせた。

準備は整った。

考えた計画はこうだ。
玄関のドアを開け、家の駐車スペースの片隅に停めてある母さんの
自転車に股がり、僕の家の裏を走るサイクリング道路をひたすら
進めば、5分程度でサイクリング道路脇を流れる川を渡る為の線路の
敷かれた橋の下に辿り着く。そこから自転車を担ぎ橋のたもとを登り、
線路内に侵入し自転車を押しながら彼女の自宅付近の駅まで2駅分歩く。
そして彼女の家までまた自転車をこぎ向かう…。

急いだ方がいい。
彼女の体重は50キロは無いとは思うがそれでも背負ったままでは
移動するのはしんどそうだ。今、この時点でもすでに重さを感じる。
もう少し体を鍛えておけばよかったなと思ってみたが今となっては
仕方ない。

玄関のドアを少し開け外の様子を確認する。

グゥ〜…

突然お腹が鳴り驚いた。慌ててドアを静かに閉める。この音でやつらに
気付かれるのも間の抜けた話…冷蔵庫の向かい、中から1リットルパック
のオレンジジュース見つけ、魚肉ソーセージもつかむ。ジュースをコップ
に注ぎ飲み干すとソーセージも食べた。…これで大丈夫だろう。

腹ごしらえも済ませ、再び玄関のドアを少し開け外の様子を確認する。
家の前の道、右側5、6メートル先に学生服姿のやつが1体、背を向けて
遠のいているのを見る。ドアから顔を出し左を確認。他はいない。

よし。

心を決め、このままゆっくりと出て玄関の鍵を音を立てずに掛け、
家の壁伝いを左にすすみ駐車スペースに向かって自転車を確認した。
ハンドルを握り駐車スペースから出そうとすると鍵がかかっていて
動かせない事に気が付く。…しまった!! 鍵かかっているのは当然か!!
心臓が激しく脈打った。鍵は確か玄関脇の下駄箱の上の小物入れの
中だ!! 周囲を見渡しやつらに気付かれていないのを確認すると急いで
玄関まで戻り静かに鍵を開けの家の中に入る。

ガチャン。
やばい!! 玄関のドアがしまる際音がたってしまった!!

まずい…気付かれたか?

下駄箱上の小物入れから自転車の鍵を手に取ると、玄関のドアをまた
ゆっくりと開け右側を確認した。やばいぞ…さっき背を向けていた奴が
こちらに向きを変え進んで来ている!! さっきは背を向けていて気が付か
なかったがその顔には生前やつらに齧りつかれたのか鼻からオデコ辺り
まで頭蓋骨が露にされていて、眼球が二つとも垂れ下がっている状態
だった。…あんな状態でもやつらはどうしてか人間を感じる事が出来、
僕がここにいる事に気付かれていたら家から出られなくなるどころか、
大勢が集まり始めとんでもない状況になってしまう事は明らかだ…。

僕は思い切って家から飛び出し、急いで玄関から出ると自転車に向かい、
かかっていた鍵を外して駐車スペースから出すと、サドルに股がりペダル
をこいで家の裏手に伸びるサイクリング道路を目指し自転車を走らせた。

すぐにタイヤからアスファルトのゴツゴツした振動が伝わって来た。
まずい…空気圧が低い!! このまま進めば二人分の体重を支えている
車輪の金属とアスファルトの間でゴムチューブが切られパンクする!!
でも、もう手遅れだ!! 兎に角進むしかない!! 家の前の道を左に進み
十字路に向かうと左手に橋が見える。サイクリング道路はすぐそこだ!!
金属の車輪部分を伝いアスファルトの感覚が直に響いた。もうパンクだ。
パンクした自転車はハンドル操作もままならず、これ以上進み様が無い
と判断。僕はサイクリング道路を目の前にして自転車を乗り捨てた。
振り返って後方を確認すると家に近づいていたやつらの一体と目が合い、
この時点では家に戻れない事を悟るとサイクリング道路を目指し、小走り
に進んでいた。もう引き返せない。このまま予定したルートを足で進み、
彼女の自宅に向かおうと決めた。


サイクリング道路に入ると、やつらの姿がないのにホッとした。
兎に角自転車で突っ切ろうと考えていたので武器になりそうな物を
持って出なかった事に不安を感じたものの仕方ない。進もう。
一体でも路上にいれば先日の様にサイクリング道路脇の柵を越え川縁の
土手に降りて避けながら進むしかない。そんな歩き辛い状態は避けたい。
しかも見た所、川の中には放り込まれたのかやつらが何体か確認出来る。
そこを進まなくてならないのはごめんだ。このままの進路で駅までは
およそ徒歩15分。自転車の使えない想定外の進行を悔やんでも仕方ない。
やつらの出現に注意しながら、僕はサイクリング道路を進んで行った。

幸いな事に川伝いのサイクリング道路というだけあって見通しのよい
直線的なコースが続いていて、やつらの姿も目下の所見当たらない。
もう少し夕方になればランニングをしている状態のやつらに出くわしも
しそうなのだけれど、まだ太陽が頭上にある時間帯のせいか、そういった
類の連中もいない。このまま何事もなくこの線路の上を通る電車の橋まで
辿り着けるといい。しかしそう上手く事が運ぶわけは無く、目の前には
サイクリング道路と交差する十字路が現れ、左手から伸びた橋に繋がる
公道が見えた。橋の上、こちら側に向かって歩くやつらを2体確認。
母親とその子供の様で手をつないで歩いる。二人とも腹部を喰われて
しまったらしく腸等の内臓がだらりと垂れ下がっていた。母親が僕に
気が付くと迷いなくサイクリング道路に入って僕を目指しゆっくりと
向かって来た。手をつないで歩かれれば子供とは言え幅3メートルも
無いサイクリング道路での進行を妨げるには充分だった。このまま進む
のは危険だろうと考え、やむを得ず、左手川沿いに連なる柵の下、
やつらが見当たらないかを確認し柵をのり越え川縁の土手に下り歩く
事にした。さすがに歩きにくいがしばらくこのまま進むしか無い。
途中で上を見上げると母親が柵越しにこちらに手を伸ばしているのが
見えたが僕は手を伸ばしても届かないくらい下方にいたのでそのまま
やり過ごす。前方に見える橋の下をくぐり抜けそのまましばらく進み、
後方30メートル程に子連れのやつらを見る。僕を追ってこちらに
向かっているのは明らかだがこの距離で追いつかれる心配は無い
だろうと、サイクリング道路の下、コンクリートの壁越しに上の状況を
確認。安全と判断し、コンクリートの壁をよじ登って更に柵を越えて
サイクリング道路に再び戻った。

…結構きつい。
運動には特に興味もなく、体を鍛える事をして来なかった自分に
少し後悔。家からまだ100メートルくらいしか移動出来ていないのに
息は思った以上に上がっていた。目的の電車の橋までこの辺りからは
10分強だろうけれど、それも彼女を背負っていない時の数字だ。
やつらに出くわす度にこの上り下り…。僕と彼女の合わせた体重に
自転車のタイアがパンクすると何故考えなかったんだろうか…いや、
いまさら失態を悔いても無駄だ。進むしか無いんだと気を持ち直し、
駅に向かって歩き始めた。

それから3度そう言った上り下りを繰り返ししばらく進むと、目に見えて
やつらの数も増えて来ていた。事件以前、駅の周辺は街の中心部でもある
ので、繁華街はそれなりの建物が乱立し賑わっていた。当然ながらやつら
の徘徊している率も高くなるだろう。このままサイクリング道路を進むの
は危険だろうと川縁の土手へ降りたまま進む事にした。

足下にはデコボコとした土。右手にはサイクリング道路を乗せた
コンクリートの壁、左手はすすきの葉のような草が茂る草むら。
非常に進み辛い。所々で大雨によって流れ着いたであろう小振りの流木
が枝を伸ばし進行を妨げている。よけて進んでいたつもりだったが
ビリっと音が聞こえ振り返ると彼女にはかせたスカートが枝にふれ破けて
しまっていた。しまった…破けた服装で送り届ける事になるなんて。
木の枝はまた何度か僕等を阻み、ズボンやスカートが引っかかると破れ
ボロボロの状態になっていった。

目的の線路を載せた橋が見えてくる。もうすぐ駅に着くだろう。これで
一安心とため息をついたが、それどころじゃない事をすぐに気付く。
やつらが僕らの進行方向の川の中にウジャウジャいる。川縁から
サイクリング道路上に登ろうとしているのだけれど、どうやら
コンクリートの壁を克服出来ずに上手く行かない様だ。20体程が
同じ動作を繰り返していた。なんでこんな事になっているのかと視線を
その集団の先にずらすと、川縁のコンクリートの壁に大きな円形の穴が
ぽっかりと口を開けていて、その中からやつらが出入りしているのが
見て取れた。穴の奥は排水口がいくつもある小川のような水路に繋がり、
攻防の末やむを得ずそこに放り込まれたやつらが出口となる穴付近で
ウジャウジャと溜まっていった様だ。これはまずい…このまま進める訳が
無い。やつらに気付かれる前にサイクリング道路へ戻って進もう。
サイクリング道路上を見渡すと片側にはビルの壁が並び、僕等の目指す
進行方向には2体が後ろ向き、1体がこちらに向かって進んでいる
のを確認した。全部で3体…上手くかわさなければ…力の強いやつらに
掴まれでもしたら身動きが取れなくなり、そして囲まれ一巻の終わりに…

僕は息を整え覚悟を決めると、サイクリング道路上に飛び出して目指す
橋の下まで一気に走った。到着までやく5、60メートル…こちらを向いて
いた1体が僕等に気付き手を伸ばすもよけてかわし、背後を向けている
2体がこちらを向く前にその間をすり抜け、目的の橋の下に辿り着いた。
橋の上まで登れば線路が現れ右手にすぐ駅ビルが見える。目の前の柵には
進入禁止の看板があったが構わず跨ぎ周囲を確認。通り抜けた3体の
やつらはまだ僕等に手が届かない所にいた。柵を越え、足下の勾配の急な
石壁を這い登ると高さ80センチくらいの鉄パイプで出来ている様な柵が
見え、右手を伸ばし掴んだ。線路が目に入る。再び周辺を見渡すもやつら
の姿は無く、背後からも追って来てはいない。胸を撫で下ろし掴んだ柵に
腰を掛けると僕は一息ついていた。

踏切の警告音が聞こえる。駅ビルの先にある踏切から聞こえる音だろう。
線路上には踏切を無視し入り込んだやつらで溢れているのではないかと
いう心配をしていたのだけれど、線路上には一体も確認出来なかった。
しばらくすると電車が走って来るのが見え、座っていた鉄柵から立ち
上がり線路の外側に身を隠した。電車はゆっくりとした速度で僕の目の前
を通過して行く。僕の位置からは電車の中までは見る事が出来ず、中が
どんな状態か解らないがやはりテレビで言っていたように電車は走って
いて人々を運搬している様だ。頼もしいと言うか、有り難いと言うべきか
確かに僕の他にも生存者がいて普段通りではないけれど、息吹きを感じ
させ、かろうじて生き延びている事がとても重く嬉しく思えた。

ここから駅構内まではだいたい50メートル程。踏切の音が止み、僕は
安全を確認しながら駅ビルの駅構内に向かって歩みを進めた。

駅構内に辿り着く。降車ホームは二つ。その両側に線路が1本づつ通って
いて駅構内には計4本の線路が敷かれた急行の止まる割と大きな駅だ。
ホーム上に人影はないけれど幸いな事に灯りは点いていて線路脇から
降車ホームによじ登る。ベンチが見えたので来た方を背にし端に座り
周囲を確認する。目の前には駅改札口へと繋がる階段があり、座ったまま
上を除き込んでみるも人影もなく物音すら聞こえない。駅員さんはいない
のだろうか?線路上にもやつらがいない事を確認し僕の後ろはホームが
終っている場所なので、目の前の階段を特に警戒し息の上がった体調が
落ち着くまで少し休む事にした。

風が流れ異様な臭いを運んで来た。
これは彼女の股間から流れ出ていた液体から発せられた臭いと同じ…
さっきまでは川縁を進んでいたので川の臭いにかき消されたのか
気が付かなかったが、街中にはすでにこう言った臭いが充満し
始めているのだろう。やつらが大勢いるのが解る。確実に。

ここから線路伝いに2駅分歩けば彼女の住む町の最寄り駅にたどり着く。
ハプニングは在ったもののなんとかここまで来れた。大丈夫さ、絶対
辿り着ける。視線をホームの先に延ばすとやつらが数体列をなしている
様に歩いているのが見えた。そこは踏切らしい。さっき鳴っていたそれ
だろう。少し前に嗅いだ臭いはそこから流れて来たのかと察する。僕は
踏切を警戒して見張るが渡っているやつらはこちらを向く素振りも見せず
生前と同じようにただ往来している様だった。本当に生前の記憶を頼りに
ルールに従って行動しているのだろうか?…それなら危険には変わりない
が線路敷地内を進んだ方がやつらに出くわす可能性が低いのではと
考えた。…だとしてもまず目の前の踏切をどうやって通り抜ければ良い
かだ。遮断機が降りるのを待つか?僕は目下の難関に考え倦ねていた。

「おいっ!!」

駅構内に声が響いた。僕は驚き周囲を見渡す。反対側のホームに人が
現れていて制服姿から察するに駅員さんらしい。しまった!! 切符買って
ないぞ!! と、何故かそんな気になってしまい慌てる。

「ごめんなさい!! すぐに出て行きますから!!」

僕はそう叫び、慌てて腰をあげその場から移動し始めていた。
兎に角面倒は困ると線路側に下り進む。駅員さんも線路側へ降り僕を
追って来る。やつらの渡っている踏切が目前に迫り、背後から駅員さんが
近づいて来ている。僕は踏切を渡るやつらの隙間を確認すると一目散に
隙間を通り抜け踏切を後にした。踏切を渡るやつらに追われるかと
振り返って確認するとこちらに視線は送るものの追って来る気配は全く
無かった。駅員さんは駅のホーム端ギリギリの線路脇で立ち止まり
こっちを見つめていた。

あせった…生きている人に出会える事は嬉しい筈なのに、怖くなり思わず
逃げてしまった。おかしな気分だ。駅員さんは僕に何を言おうとしていた
のだろうか…。今となっては解らないけれど、おかげでやつらの渡る踏切
を思い切って勢い良く横切り上手く進む事が出来たのだから、結果善しと
しよう。不思議な事にやつらは僕に気が付くも何故かついて来ない。
もしかすると本当に生前に記憶していた危険行為との認識が影響している
のかもしれない。死した者がルールを守り、生きている者が従わない様子
に、矛盾のような思いが込み上げ、思わず笑みがこぼれた。でも考えるに
こう言った事こそが後に人類が生き残れる可能性を示しているのでは
ないかという気もして来た。

希望はきっとある。


少し勇気もわいた。




(続く)




第28章へ。
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